食道浸潤胃癌は、下縦隔や腹部大動脈周囲リンパ節への転移頻度が高く、予後が悪いことが知られている。このため、従来、縦隔郭清を目的に左開胸を伴う拡大郭清手術が行われてきた。しかし、8年間の追跡研究により、開胸開腹手術よりも開腹経横隔膜手術の方が優れていることが明らかになった。国立がんセンター中央病院外科の笹子三津留氏が、米オーランドで1月22日から24日まで開催された2010 Gastrointestinal Cancers SymposiumASCO GI)で報告した。

 対象は、3cm以内の食道浸潤を伴う75歳以下の進行胃癌患者165人。術前に、開腹経横隔膜手術もしくは開胸開腹手術にランダム割付し、胃全摘、下部食道切除、D2郭清を行った。開胸開腹群は、下縦隔郭清も行った。治癒切除後、再発が確認されるまで化学療法は行わなかった。平均手術時間は開腹群305分に対し、開胸開腹群338分。輸血頻度は開腹群30.5%に対し、開胸開腹群45.9%だった。手術関連死は開胸開腹群のみで3人だった。術後合併症は、個々の頻度に大きな差はなかったが、6つ以上の何らかの合併症を有する頻度は開腹群22.0%に対し、開胸開腹群41.7%と有意差がみられた(p=0.008)。

 登録終了した2003年11月時点で、開腹群82人の3年生存率62.1%、5年生存率48.5%、生存期間中央値46.6カ月。これに対し、開胸開腹群83人は3年生存率54.6%、5年生存率35.7%、生存期間中央値45.1カ月で、最終的に開胸開腹術が優位になる可能性は3.65%にとどまっていた。アップデートされた最新の結果でも、5年生存率は開腹群51.2%に対し、開胸開腹群36.9%。生存期間中央値は開腹群5.3年に対し、開胸開腹群3.4年にとどまった。サブ解析を行った結果、いずれも同様の傾向が得られた。

 再発については、リンパ節が開腹群29%、開胸開腹群45%。腹膜が開腹群22%、開胸開腹群21%。肝臓が開腹群20%、開胸開腹群19%。肺が開腹群12%、開胸開腹群12%。胸膜が開腹群7%、開胸開腹群2%などだった。動脈血酸素分圧や体重などについても、開胸開腹群は開腹群に比べ、回復が遅い傾向にあった。

 以上の結果から笹子氏は「3cm以内の食道浸潤胃癌に対し、開胸開腹手術は勧められない」と結論付けた。