肝臓内視鏡外科手術の全国調査の結果、完全腹腔鏡下手術、腹腔鏡補助下手術、用手補助腹腔鏡手術(HALS)のいずれかで肝切除を行って開腹手術に移行した頻度は、海外の報告と比べて極めて少ないことが分かった。また、肝硬変合併例と非合併例の術後合併症の発症頻度の差はあまり大きくないことも確認された。肝臓内視鏡外科研究会の調査によるもので、12月2日に都内で開催された第3回肝臓内視鏡外科研究会で、岩手医科大学外科の新田浩幸氏が同研究会事務局を代表して報告した。

 肝硬変合併肝細胞癌(HCC)などでは根治性と低侵襲性を兼ね備えた治療法が望ましく、肝臓内視鏡外科手術に期待が集まっている。肝臓内視鏡外科手術のうち、部分切除や外側区域切除を中心とする腹腔鏡下肝切除はすでに先進医療として認可されていたが、切除範囲を拡大した肝切除に適用できる腹腔鏡補助下肝切除(部分切除および外側区域切除を除く)が2008年8月の高度医療評価会議で高度医療として承認され、先進医療の一類型として保険診療と併用できることになった。

 今回報告されたのは、2008年12月までに肝臓内視鏡外科手術が行われた1057人について、全国32の施設から送られたアンケート調査の回答を集計したもの。

 疾患で最も多かったのは肝細胞癌(HCC)で67%。転移性肝癌(21%)がこれに続いた。

 切除範囲では、部分切除が49%を占めた。左外側区域切除が17%、「Major liver resection(以下、Majorと表記)」(三区域切除+拡大肝葉切除+肝葉切除+区域切除)は10%となった。「アブレーション」(ラジオ波熱凝固療法(RFA)+マイクロ波凝固療法(MCT))は21%だった。

 完全腹腔鏡下手術、腹腔鏡補助下手術、HALSの割合はそれぞれ59%、31%、5%で、海外で頻度が高いHALSは国内では頻度が低かった。完全腹腔鏡下手術では部分切除など範囲が小さい肝切除が多く、腹腔鏡補助下手術ではMajorなど範囲が大きい肝切除が多かった。

 肝切除を行った837人中、開腹手術に移行したのは2.2%で、海外の成績(約10%)と比べて顕著に低かった。再手術例はなく、周術期死亡は0.2%、術中偶発症は1.7%だった。術中偶発症の内訳は、出血1.3%、他臓器の損傷0.2%、ガス塞栓0.1%だった。術後合併症の発症は9.0%で、胆汁漏は1.7%だった。治療を要する腹水、胸水、出血、手術部位感染(SSI)の発症は、それぞれ1.2〜2.0%だった。

 これらの頻度を術式別にみると、開腹手術への移行と術中偶発症の発症は完全腹腔鏡下手術が最も高く、それぞれ2.6%と2.4%。術後合併症は腹腔鏡補助下手術が11.3%で、完全腹腔鏡下手術の6.7%を上回った。腹腔鏡補助下手術では切除範囲の大きい肝切除が多く行われたことがその理由と考えられた。

 切除範囲別にみると、開腹手術への移行は部分切除の6.7%が最も高く、術後合併症はMajorの17.0%が最も高かった。

 肝硬変の合併の有無でみると、開腹手術への移行は肝硬変非合併HCCではゼロ、肝硬変合併HCCで3.1%。術後合併症の腹水と胸水は、肝硬変非合併HCCでは1.3%とゼロ、肝硬変合併HCCでは3.1%と1.7%だった。「肝硬変合併例でも予想より少なく、SSIなどほかの術後合併症も肝硬変だからといって多くなることはないようだ」と新田氏は評価した。

 今後の調査について新田氏は、「肝硬変合併HCCや転移性肝癌についての長期的な追跡、肝切除とアブレーションの比較を行い、肝切除の方が優れているという結果が得られたら術式選択の方向性が変わるのではないか。どのような機器を使えばよいかといった点も調査していきたい」と話した。