独立行政法人産業技術総合研究所ブラディオン医用機器開発連携研究体体長の田中真奈実氏は、大腸癌早期スクリ−ニング、治癒判定、前立腺機能モニター、膀胱癌、腎癌の確定診断補助として使えることが期待される「ブラディオン」という癌マーカーの血液検査を、一般検診(臨床研究)として昨年11月から本格的に無償で実施している。他のマーカーも同時に調べることによって、薬剤感受性や治療効果の判定にも利用できるという。

 ブラディオンは細胞の増殖・分裂を調節するセプチンファミリーに属するたんぱく質で、細胞骨格線維に発現するATP結合性GTP分解酵素。セプチンファミリーの他のたんぱく質は、一般に細胞分裂の周期に関係なくアクチン線維と共に発現しているが、ブラディオンは、大腸癌細胞などのみに発現し、癌細胞の細胞分裂を整合性良く終わらせる役割を果たしていると考えられている。

 田中氏が行っている血液検査は、血中ブラディオン分子を特異抗体と結合させ、共焦点レーザーを用いた一分子蛍光測定法によりブラディオン値を出すというもの。他に、前立腺特異抗原(PSA)、薬効判定マーカーのTGFβ1、細胞増殖マーカーであるアシルCoエンザイムAを併用し、早期診断、治療効果判定、その後のモニターを行っている。

 症状のない健常者ボランティアを対象にした計測では、111検体中32検体が陽性となった。40代後半から50代の男性の陽性者11人に大腸ファイバースコープによる精査を行ったところ、全員に大腸腺腫が認められた。全員に腺腫の切除を行ったところ、治療後7日で全員のブラディオン値が陰性化した。

 進行癌患者については検査数が少ないものの全員陽性で、ブラディオン値が薬効評価や治療後の経過モニターとして活用できるという。

 なお、良性腫瘍は7人中1人のみ(陰嚢水腫で陽性例1名)、臨床現場にて判定に迷う膀胱癌疑い(癌陰性)の患者では5人中0人、腎癌患者では93人中84人が陽性(90.3%)、膀胱癌患者では27人中14人が陽性(52%)。前立腺癌・肥大では、24人がモニター中で、特に外科的手術等の対象とせず、経過観察を行っている。

 測定機器が1台3000万円であることが今後の普及の障害となると田中氏は考え、少なくとも1台200万円程度に抑えられる超小型化学分析システム(μTAS)を用いた、疾病マーカーの簡易検査システムの開発にも着手している。