乳がん検診を受ける女性が増えるにつれて、また、検出技術の向上によって、直径1cm以下の乳がんが発見されるケースが増えている。米M.D.Anderson癌センターの研究者たちは、腫瘍が小さくリンパ節転移陰性でも、HER2陽性であれば、その後の再発と転移のリスクは高いことを明らかにした。詳細は、11月2日付けのJournal of Clinical Oncology誌電子版に掲載された。

 早期の乳癌は一般にHER2陰性を示す。腫瘍が小さいのにHER2陽性を示す患者は、7〜10%にとどまる。現在のところ、腫瘍が小さくリンパ節転移のない患者に対する標準治療は、腫瘍摘出術とその後の放射線治療となっている。

 よりステージが進んだ乳癌の場合は、HER2陽性の患者には抗HER2療法(トラスツズマブなどの投与)が適用される。米国では、トラスツズマブの適応は、HER2陽性でリンパ節転移のある乳癌患者と、リンパ節転移は陰性だがホルモン受容体(エストロゲンまたはプロゲステロン)陽性の患者となっている。現行の治療ガイドラインは、直径1cm未満の乳癌に対するトラスツズマブの適用を推奨していない。
 
 米M.D.Anderson癌センターのAna M. Gonzales-Angulo氏らは、1990年から2002年に同癌センターで早期乳癌(T1a、T1b)と診断され、診断時の腫瘍の大きさが1cm以下で、リンパ節転移、遠隔転移がなかった(N0、M0)患者の記録を後ろ向きに調べた。術後に化学療法またはトラスツズマブ投与を受けた患者を除く965人を分析対象とした。

 HER2陽性か陰性かで2群に分け、無再発生存率と無遠隔転移生存率を比較した。追跡期間の中央値74カ月で、72人が再発を経験していた。

 5年間の無再発生存率はHER2陽性群77.1%、HER2陰性群93.7%で、差は有意だった(p<0.001)。無遠隔転移生存率はそれぞれ86.4%と97.2%で、やはり有意差がみられた(p<0.001)。

 多変量解析を行い、HER2陰性者と比較した陽性者の再発リスクを調べたところ、ハザード比は2.68(95%信頼区間:1.44-5.0、p=0.002)になった。遠隔転移リスクはさらに高く、ハザード比5.3(2.23-12.62、p<0.001)となった。

 他の2施設から乳癌患者350人に関する情報を得て同様の分析を行ったところ、一貫した結果が得られた。

 HER2陰性群に比べHER2陽性群では再発リスクが2.68倍、転移のリスクは5.3倍という結果は、研究者たちの予測を超えていたという。

 現時点では、早期のHER2陽性患者に対するトラスツズマブの利益とリスクに関するエビデンスはないため、早期の患者を対象とする臨床試験を行う必要があるだろう。