国立がんセンター中央病院(東京・築地)は、9月に「肉腫(サルコーマ)専門診療グループを立ち上げた」と、10月19日開催のプレスセミナーで発表した。

 肉腫は「軟部肉腫」あるいは「悪性軟部腫瘍」とも呼ばれるもので、頭、手足、体の軟部組織(筋肉、骨、関節、神経、腱、脂肪、血管、リンパ管など)に悪性腫瘍ができる。50種類以上あり、しかも全身に転移する可能性があるため、今後は13の診療科(整形外科、胸部外科、消化管外科、肝胆膵外科、頭頸部外科、泌尿器科、婦人科、小児科、腫瘍内科、病理診断、放射線診断、放射線治療、薬剤部)の医療スタッフ合計31人がチーム医療を展開していくことになった。「まれながんなので、病態や治療に関する情報が極端に少なく、しばしば診断や治療に難渋しています。そこで、私たちはがんの専門家の英知を集めて限界に挑みます」と肉腫診療グループで小児科医長の牧本敦氏は話す。

 肉腫は世界中で“忘れられたがん”と呼ばれるほど患者数が少なく、例えば日本では、がん患者58万人のうち、骨・軟部腫瘍と診断された人は0.3%(2002年)。専門医が少なく、患者は3カ所も4カ所も病院を回り、ようやく正確な診断や治療を受けられるという。発生の原因が分かっていないため、効果的な治療法や薬の研究も進んでおらず、患者は何度も手術や治療を繰り返す。

 国立がんセンター中央病院では、他の病院で「肉腫」、あるいは「肉腫の疑い」と診断された患者を対象とする電話相談「肉腫ホットライン」も開設した。専門医が電話で疑問に答えてくれる。全国の病院からの、診断・治療の相談窓口としても機能していく。

 この診療グループ発足は、今年7月、「サルコーマセンターを設立する会」(代表・吉野ゆりえ氏)が開催したシンポジウム「日本におけるサルコーマ診療の体系化を考えよう!」での話し合いがきっかけとなった。12日後には国立がんセンターで院内の会議が開かれ、40日後には診療グループが出来上がった。スピード決断を下した病院長の土屋了介氏は「患者さんがどこに行けばいいかわからないという現状を解決すること、この“外からの見える化”が大切と考えた」と言う。

 プレスセミナーでは、このしくみができたことによる従来との違いについて、「これまでより、早く専門医に相談できるようになった。診断と治療のスキルが高度なので安心できる」と、後腹膜平滑筋肉腫患者でもある吉野氏が患者の立場から語った。また、GIST(消化管間質腫瘍)患者の櫻井雄二氏は診療グループに対して、「駆け込み寺のような存在になってほしい。そして、国内の肉腫研究者や医師に働きかけていただき、治験や臨床試験が増えるといい」と期待している。