癌患者の母親の癌細胞が子宮内の胎児に“転移”する可能性を示す、英癌研究所(Institute of Cancer Research)のMel Greaves氏らのレポートが、10月12日付けのProceedings of the National Academy of Sciences誌電子版に掲載された。

 理論上、母親から胎盤を通じて胎児の血液中に入った癌細胞は、全て子どもの免疫システムが破壊する。しかし、非常にまれではあるが、母親と子どもが同一の癌を共有するかのように見える症例が報告されており、この 100年間科学者を悩ませてきた。

 研究チームは、白血病を発症した日本人女性とその子どもの癌細胞を、高度な DNA鑑定法を使用して調べることで、母親と子どもの白血病細胞が、同一のまれな癌遺伝子(BCR-ABL1)の変異をもつことを発見した。これは、両者の白血病が、同じ一つの細胞を起源としていることを示すという。さらに子供の癌細胞のマイクロサテライトマーカー(遺伝子マーカー)はすべて母親の癌細胞に起源していた。

 この“転移”した癌細胞は、自分の細胞と他人の細胞を区別するために重要な役割をもつ、主なヒト白血球抗原(HLA)の発現を制御する領域の DNAを欠いていた。このため、母親から送り込まれた癌細胞は、子どもの免疫システムによって外部からの侵入者として認識されず、破壊されることもなかった。

 しかし「母親から子へ、このような癌の転移は極めてまれである」とGreaves氏は強調している。ほぼ全ての場合で、子供の免疫システムは母親からの白血病細胞を破壊できるという。