フランスCentre Eugene Marquis RennesのJean-Luc Raoul氏

 進行性肝細胞癌(HCC)に対する経口のマルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブの有効性と安全性が示されたフェーズ3試験「SHARP試験」とアジア太平洋(AP)試験の患者のサブグループ解析から、ベースラインの肉眼的血管浸潤(MVI)や肝外転移(EHS)の有無、ECOG PSの状態に関わらずソラフェニブは有効と考えられた。この結果は、9月20日から24日にドイツ・ベルリンで開催された第15回欧州癌学会(ECCO)・第34回臨床腫瘍学会(ESMO)で、フランスCentre Eugene Marquis RennesのJean-Luc Raoul氏が発表した。

 SHARP試験には北米と欧州から、AP試験には中国、台湾、韓国から患者が参加した。患者はECOG PS0〜2、Child-Pugh分類でA、HCCに対する全身療法の治療歴がなく、ソラフェニブ400mgを1日2回、またはプラセボの投与を受けた。

 Raoul氏らは、この2つの試験に登録した患者において、予後不良の既知の予測因子であるMVI、EHS、ECOG PSについて転帰を比較するサブグループ解析を行った。

 患者は、試験薬投与開始前28日以内に放射線学的に評価したMVIとEHSの有無、ECOG PSはベースラインで0または1/2により、層別化した。転帰として全生存率(OS)、病勢コントロール率(DCR)を評価した。

 AP試験ではSHARP試験よりもHCCが進行し、MVIとEHSがあり、ECOG PSの値が高い症例が多かった。また腫瘍を2カ所以上に認める症例も多かった。

 両試験のOSの中央値を比較すると、SHARP試験のソラフェニブ群(299人)は10.7カ月、プラセボ群(303人)は7.9カ月(ハザード比0.69)、AP試験のソラフェニブ群(150人)は6.5カ月、プラセボ群(76人)は4.2カ月であった(ハザード比0.68)。

 SHARP試験では、MVIとEHSの両方またはどちらかがあった場合のOSの中央値は、ソラフェニブ群(209人)では8.9カ月、プラセボ群(212人)では6.7カ月だった(ハザード比0.77)。どちらもなかった場合、ソラフェニブ群(90人)では14.5カ月、プラセボ群(91人)では10.2カ月だった(ハザード比0.52)。

 AP試験では、MVIとEHSの両方またはどちらかがあった場合のOSの中央値は、ソラフェニブ群(118人)では5.6カ月、プラセボ群(61人)では4.1カ月であった(ハザード比0.75)。どちらもなかった場合、ソラフェニブ群(32人)では14.3カ月、プラセボ群(15人)では8.0カ月だった(ハザード比0.45)。

 さらにECOG PSでOSの中央値をみると、SHARP試験では0の場合、ソラフェニブ群(161人)では13.3カ月、プラセボ群(164人)では8.8カ月だった(ハザード比0.68)。1/2の場合、ソラフェニブ群(138人)では8.9カ月、プラセボ群(139人)では5.6カ月だった(ハザード比0.71)。

 同様にAP試験のOSの中央値はECOG PSが0の場合、ソラフェニブ群(38人)では7.1カ月、プラセボ群(21人)では8.1カ月でわずかに曲線が交差した(ハザード比0.77)。1/2の場合、ソラフェニブ群(112人)では6.1カ月、プラセボ群(55人)では3.9カ月だった(ハザード比0.61)。

 DCRは両試験のどの部分母集団でもソラフェニブ群で優れていた。

 「今回の解析結果を解釈する際には、両試験は本来このようなサブグループでの統計学的な有意差を検出するためのものではないことに注意が必要」としながらも、Raoul氏は「今回の解析結果から、ベースラインの予後因子や地域がさまざまであってもソラフェニブが有用であることが裏づけられた」とコメントしている。