米Columbia大学のRobert Schlaberg氏らは、ガンマレトロウイルス属のXMRV(xenotropic murine leukemia virus-related virus)が人間の前立腺癌に存在すること、特に悪性の上皮細胞に高頻度に見つかり、悪性度の高い前立腺癌患者に感染が多いことを明らかにした。詳細は、9月8日付けのPNAS誌電子版に掲載された。

 米Cleveland Clinicなどの研究者たちが、XMRVと前立腺癌の関係を初めて発表したのは2006年だった。今回新たに、実際に前立腺癌の組織にXMRVが存在すること、そして、グリーソンスコアが高い、すなわち悪性度の高い患者に感染が多いことが明らかになった。一方で、特定の遺伝的な多型を有する患者に感染が多いという先の知見を覆す情報も得られた。

 既によく知られた子宮頸癌とヒト・パピローマウイルス(HPV)のような関係が、前立腺癌とXMRVの間にもあるのか。今後、XMRVと発癌の関連が明確に示されれば、これを指標とする新たな診断法や、ワクチンまたは抗ウイルス薬を用いた前立腺癌の予防、治療法が開発されることになるだろう。

 ガンマレトロウイルス属のウイルスには、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、コアラ・レトロウイルスなどがあり、多くの動物で白血病や肉腫を引き起こすことが知られている。しかし、人間の癌との関係は明らかではなかった。人間への感染が示されたのは、この属のウイルスではXMRVが初めてだ。

 著者らは、前立腺癌患者233人と、良性疾患により経尿道的前立腺切除を受けた101人から採取された標本を対象に、PCRによる定量分析と、抗XMRV抗血清を用いた免疫組織学的検査を行った。

 ホルマリン固定されたパラフィン切片を用いて、PCRでXMRVのDNAを検出したところ、癌患者の6.2%、対照群の2.0%に感染が見られた。次に、抗血清を用いてXMRVたんぱくを検出したところ、患者の23%、対照群の4%が陽性となった。XMRVたんぱくの局在を調べると、陽性標本の85%において、ウイルスは悪性の上皮細胞にクラスター状に存在していた。悪性上皮細胞への局在は、ウイルス感染が癌化に直接関係する可能性を示す。

 結果を総合すると、これらの検査でXMRVが見つかるリスクは、良性の前立腺肥大の組織に比べ、前立腺癌の組織で5.7倍(p<0.0001)であることが明らかになった。

 次に、ウイルス感染の有無と前立腺癌の病期や悪性度との関係を調べた。グリーソンスコアとの関係を調べたところ、XMRVは、より悪性度の高い癌で高頻度に検出された。グリーソンスコア6では陽性率は18%、7で27%、8は29%、9は44%。

 術後病理組織学的分類(pT分類)との関係も調べた。pT2では25%、pT3は23%だった。pT4は5例のみだったが1例(20%)が陽性だった。診断時の年齢とXMRV感染の間に有意な関係は見られなかった。

 先に行われた研究では、RNase Lの活性が低下する多型のホモ接合体がXMRVに感染しやすいと報告していたが、今回の結果は、XMRV感染とこの多型は無関係であることを示した。従って、XMRV感染リスクのある男性の範囲は、RNase L低活性型の多型を保有する人々から、すべての男性に広がったことになる。

 今後、このウイルスが直接癌化に影響するかどうかを明らかにする必要がある。