空腹時の血清インスリン値の上昇は、正常値の範囲内であっても、前立腺癌のリスクを高める可能性があることが、フィンランドの男性を対象とした研究で明らかになった。8月21日付けのJournal of the National Cancer Institute誌電子版で、米国立癌研究所のDemetrius Albanes氏らが発表した。

 研究は、「Alpha-Tocopherol, Beta-Carotene Cancer Prevention Study」において、前立腺癌を発症した100人と発症しなかった400人を対象に、血清インスリン値と血糖値、さらにはインスリン抵抗性の指標として、インスリンと血糖のモル比およびHOMA-IR値 (homeostasis model assessment of insulin resistance)を調べた。空腹時の血清は癌と診断される5年から12年前(平均9.2年前)に採取された。

 その結果、統計的に有意ではなかったが、空腹時の血清インスリン値は発症群のほうが非発症群に比べて8%高く、インスリンと血糖のモル比は10%、HOMA-IR値は6%高かった。

 次に、血清インスリン値によって対象者を4群にわけ、前立腺癌の発症リスクを比較したところ、インスリン値が最も低かった群に比べ、2番目の群のオッズ比は1.50、3番目は1.75、インスリン値が最も高かった群は2.55で、いずれも統計的に有意に高いことが示された。

 同様の傾向がHOMA-IR値でも認められ、最も低い群に対する最も高い群のオッズ比は2.10だった。一方、血糖値では前立腺癌リスクとの関連性は見られなかった。また血清インスリン値と前立腺癌リスクとの関係は、やせた男性や、仕事で身体活動の少ない男性で顕著に認められた。

 インスリンと構造が似たポリペプチドであるインスリン様成長因子(IGF)は、細胞の有糸分裂や細胞の成長を促し、前立腺の発癌に関与することが知られている。今回の結果は、血液中のインスリンが直接、将来の前立腺癌発症リスクに関連する可能性を示したものといえる。