進行膵臓癌患者には静脈血栓塞栓症VTE)がしばしば見られる。化学療法がVTEリスクを高めることも知られている。ドイツCharite病院のHanno Riess氏らは、化学療法とともに低分子量ヘパリン(LMWH)のエノキサパリンを投与すると、当初3カ月間のVTEイベントを減らせることを示した。このCONKO 004試験の結果はASCO2009で6月1日に発表された。

 LMWHを用いた抗凝固治療はVTEを予防するが、化学療法が適用されている進行膵臓癌患者のVTE一次予防に役立つかどうかを調べた研究では明確な結果が得られていない。また、LMWHが癌患者の全生存期間を延長できるかどうかについては議論があった、

 著者らが先に行った予備的な研究では、エノキサパリンを化学療法に追加する治療の安全性と実現可能性が示された。

 著者らは、症候性のVTEは進行膵臓癌患者の予後を悪化させることから、エノキサパリンの症候性VTEに対する影響を調べるオープンラベルの前向き無作為化試験を実施した。

 主要エンドポイントを化学療法開始から12週間の臨床的に意義がある症候性VTE(下肢、骨盤、上肢の深部静脈血栓症、肺塞栓)に設定。2次エンドポイントは、6カ月、9カ月、12カ月時のVTE、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月の大出血、無増悪生存期間、全生存期間、奏効率、毒性とした。

 試験は、症候性VTEが24人に起こればエノキサパリンのVTEリスク低減効果を評価できる設計となっていた。

 対象は、化学療法歴なしで、組織学的または細胞学的に進行膵臓癌と確認されており、全身症状を評価するKarnofskyスケール(KPS)が60%以上の、外来で管理されている患者。クレアチニンクリアランスが30mL/分超、2週間以内に大出血がない、2年以内にVTEがないといった条件を満たした人々を登録した。

 まず、KPSと血清クレアチニン値に基づいて患者を2分し、当初3カ月間は異なる化学療法レジメンを適用した。

 KPSが80%以上でクレアチンは施設基準値上限(ULN)以下の、全身状態がよい患者には、GFFC(ゲムシタビン1000mg/m2、ホリニン酸200mg/m2、フルオロウラシル750mg/m2、シスプラチン30mg/m2)を適用。

 KPSが60-70%またはクレアチニンがULN超の患者にはゲムシタビン1000mg/m2のみを用いた。

 3カ月を過ぎた時点からいずれのグループにもゲムシタビンのみを用いた。

 2グループのそれぞれについて、患者を無作為にエノキサパリン1mg/kg(通常用量の半量)を1日1回投与するグループ(E群)と、観察のみのグループ(O群)に1:1で割り付けた。3カ月以降はエノキサパリンの用量を40mg/日とし、進行が見られるまで治療を継続。反応は最低でも12週ごとに評価した。

 2004年4月から33医療機関で患者登録を行い、VTEを発症した患者が24人になった2009年1月にプロトコールに基づいて登録を終了。この時点で312人が登録されていた。E群は152人(年齢の中央値は63歳)、O群(62歳)は160人だった。

 ベースラインの患者特性は両群間で同様だった。全体の255人がGFFC、57人がゲムシタビンのみを用いた化学療法を受けていた。

 2009年4月に以下のintention-to-treat分析を行った。最初の3カ月間のVTEイベントは、E群の2人(イベント発生件数は2件)、O群の15人(うち1人が2回経験したためイベント発生件数は16件)に見られた。

 発生率はE群が1.3%、O群が9.9%で、絶対リスク減少が8.6%、相対リスク減少は87%(いずれもP<0.01)、治療必要数(NNT)は12となった。

 適用された化学療法で患者を分けると、O群のVTE発生患者15人のうち5人がゲムシタビンのみ、10人がGFFCの投与を受けており、E群では1人がゲムシタビンのみ、もう1人はGFFCを適用されていた。エノキサパリン併用によるリスク減少はGFFC群でのみ有意になった。この結果が、GFFCという化学療法レジメンの影響なのか、GFFCが適用された患者の全身状態が良好だったことに基づくのかは明らかではない。

 3カ月間の大出血イベントはE群3.75%、O群2.63%で有意差はなかった(P=0.6)。

 追跡期間の中央値が30.4週の時点で、非常に予備的ながら全生存期間を求めたところ、O群が29週、E群が31週という結果になった。

 30.4カ月の時点のVTE発生はE群5.0%、O群15.5%で、絶対リスク減少は10.5%(P<0.05)になった。出血はそれぞれ6.3%と9.9%で差は無かった(P=0.6)。

 進行膵臓がんに対する第1選択治療を受けている患者が臨床的に意義のある症候性VTEを発症するリスクは高かったが、1/2用量のエノキサパリンを併用すれば当初3カ月間の症候性イベントを有意に減らせることが明らかになった。1/2用量のエノキサパリンは外来患者に安全に適用できることも示された。著者らは、今後追跡を継続すれば、奏効率、無増悪生存期間、全生存期間が分析できると考えている。