前立腺癌に対する内分泌療法の副作用のホットフラッシュにはセロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬SNRI)の50mg/日の投与が有効であり、また間欠内分泌療法IAS)を行った患者のQOLでは性機能と社会・家族関係で有意な改善が認められることが分かった。4月16〜19日に岡山市で開催された第97回日本泌尿器科学会総会の日本泌尿器科学会(JUA)アップデートセッションのパネルディスカッションで、千葉大学大学院医学研究院泌尿器科学今本敬氏が発表した。

 内分泌療法は、前立腺癌治療体系の一つの大きな柱となっており、日本泌尿器科学会の統計ではT1c〜T3の患者の45.9%に初期治療として実施されている。しかし、アンドロゲン除去により、ホットフラッシュ、骨粗鬆症、性機能障害、うつなどの副作用も出現する。

 ホットフラッシュは、内分泌療法を受けた患者の40%以上に報告され、QOLを低下させる大きな要因となる。近年、中枢でのセロトニン(5-HT)の低下が関与すると考えられており、治療法として注目されているのが抗うつ薬の第四世代、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)である。SNRIはSSRIと異なり、他剤との相互作用が少なく副作用も比較的少ないため、精神科以外の診療科でも使用しやすい薬剤と言われている。

 今本氏らは、前立腺癌で内分泌治療中のホットフラッシュに対するSNRI(塩酸ミルナシプラン)の有効性を検討した。内分泌療法を3カ月以上施行し、ホットフラッシュの頻度が3回以上/日の患者12人(平均年齢74.7±8.8歳)を対象とし、塩酸ミルナシプランを1日1回25mgまたは50mgを朝食後に経口投与した。投与前と以後6週間置きに12週間目までホットフラッシュアンケートを施行し、ホットフラッシュスコアを測定した。

 12人中、塩酸ミルナシプラン25mg/日投与群の5人と50mg/日投与群の4人が判定可能で、この9人のホットフラッシュスコアは12週間後に有意に低下した。発生回数は有意ではないが減少した。用量別では50mg/日投与群で有意なスコアの低下と発生回数の減少を認めた。12週時にホットフラッシュスコアが50%以上改善したのは25mg/日投与群40%、50mg/日投与群75%であった。

 内分泌療法による副作用を軽減しうる方法として、IASがある。IASの利点には、アンドロゲン依存性の期間を長く維持できる可能性、性機能の回復、QOLの改善、骨粗鬆症の予防、治療コストの軽減がある。欠点には、頻回のPSAとテストステロンのモニタリング、治療中止期間中の病状進行の危険性、治癒可能癌での不完全な治療につながる可能性などがある。

 千葉前立腺研究会のIASのプロトコールでは、Maximum androgen blockade(MAB)の開始後、6〜8カ月のPSAが4.0ng/ml未満のPSA good responderと4.0ng/ml以上のpoor responderに分け、前者では9カ月以降にMBAを中断し、その後PSAが15ng/mlまたは治療前値を超えた場合にMABを再開し、後者では他の治療に切り替える。臨床病期Cの26人と、Dの25人に、すでにIASが実施されている。

 IASを施行した患者の身体状況、社会・家族関係、性機能についてのQOLアンケート解析では、性機能と社会・家族関係で有意差を認めた。血中テストステロン値は内分泌療法の第1サイクルの治療期間が24カ月未満の症例では10カ月前後で回復したが、治療期間が24カ月以上の症例では回復に長期間を要し、回復の程度も治療前値の5割程度だった。

 今本氏は、「今後、IASの適応症例の選択を検討するとともに、治療法の選択としてMABの適応・治療再開のためのPSA値の設定・治療期間について、経験に基づいた現在の設定から、臨床試験の結果に基づいた設定に変更する必要がある」と話した。