早期膀胱癌患者が診断から2年以内に積極的な治療を受けても、生存利益は得られない可能性が示された。米Michigan大学Health SystemのBrent K. Hollenbeck氏らが、後ろ向き研究の結果を米国立癌研究所(NCI)ジャーナル電子版に2009年4月7日に報告した。

 膀胱癌に対する最適の治療戦略はいまだ明らかになっていない。現行の治療ガイドラインは、尿の細胞検査を頻繁に行うこと、より積極的な治療を適用することを推奨しているが、実際には、個々の泌尿器科医が選択する治療は様々だ。

 著者らは、癌登録プログラムである「サーべイランス・疫学・最終結果(SEER)」データベースとメディケアのデータベースから抽出した患者情報を結びつけた、SEER-Medicareデータベースを利用して、早期のより強力な治療が臨床転機の向上に関係するかどうかを調べる後ろ向き研究を行った。

 1992年から2002年に早期膀胱癌(ステージ0またはIで、Ta、T1、Tisを含む)と診断された2万713人を選出、一人ひとりについて、診断から2年間の膀胱癌治療費を計算した。それらの患者を治療した医師940人を、担当患者の治療費の平均を指標として4等分した。

 著者らは、治療費用が高額であるほど積極的で強力な治療が行われたとみなして、2005年末日までの生存を含む臨床転機とその後の大きな介入の必要性と、治療費の関係を調べた。

 主要エンドポイントは全死因死亡に、2次エンドポイントは、膀胱癌死亡、その後の大きな介入(根治的膀胱切除術化学療法放射線治療など)などに設定された。

 治療費の平均が最低だった医師グループが担当した患者の治療費は2830ドル、最高額だった医師の患者群では7131ドルだった。

 高額治療を行っていた医師は、調査対象となった医療サービス(膀胱内注入療法、内視鏡検査、画像診断など)のすべてを高頻度に適用していた。

 しかし、こうした積極的なアプローチは生存期間延長をもたらしていなかった。最低額グループに比べ最高額グループの患者の全死因死亡の調整ハザード比は1.03(95%信頼区間:0.97-1.09)で有意な差はなかった。

 また、積極的なアプローチは、その後の大きな介入の回避にも役立っていなかった。大きな介入が必要だった患者の割合は、最高額グループが11.0%、最低額グループが6.4%(P=0.02)。

 なお、最低額グループに比べて、最高額グループの患者は、その後に根治的膀胱切除術を受けるリスクが約2.5倍だった。膀胱癌死亡率も有意に高かったという。
 エディトリアルで、米Duke大学医学部のGary H. Lyman氏らは、医療費の請求額に基づく後ろ向き研究の解釈は慎重に行う必要がある、と述べている。

 治療に用いられた金額が大きく異なる早期膀胱癌患者の間には様々な違いがあったと考えられるが、それらについて十分な調整は行われていない。今回、ハザード比の推定時に調整に用いられた共変数は、人口統計学的特性、膀胱癌の病期、併存疾患の数、社会経済的地位などに留まっていた。Lyman氏は、個々の患者の予後予測因子を調整に加える必要があると考えている。

 また、平均治療費が高い医師の下には、治療が難しい患者が集まっている可能性もある。

 したがって、特定の検査や治療が不要であることを明確に示す研究結果が得られるまでは、現行のガイドラインに沿って膀胱癌治療を進めるべきだ、とLyman氏は述べている。