岡山大学遺伝子治療臨床研究審査委員会は、4月6日に開いた会合で、同大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器病態学分野教授の公文裕巳氏らが申請していた前立腺癌に対する臨床研究計画を承認した。今月中に厚生労働省に申請する予定で、厚労省の承認が下りたのち、実際に研究が行われることになる。また、公文氏らは、同じ遺伝子治療研究を米国でも実施することを目指して米食品医薬品局と話合いを進めており、米国では年内の実施を見込んでいる。

 公文氏らが計画している遺伝子治療は、アデノウイルスベクターREIC/Dkk-3(Reduced Expression in Immortalized Cells/Dickkopf-3)遺伝子を導入したもの。REIC/Dkk-3遺伝子は癌抑制遺伝子で、前立腺癌では100%発現が抑制されているという。

 REIC/Dkk-3を導入したウイルスを局所に接種すると、癌細胞ではたんぱく質生成の不具合で小胞体ストレスが生じ、癌細胞がアポトーシスを起こす。さらにREICたんぱく質は樹状細胞を分化誘導する機能を持ち、アポトーシスによって生じる癌抗原を認識する細胞傷害性T細胞を誘導する。

 また、正常細胞では細胞死は起こらないものの、小胞体ストレスからインターロイキン7が産生され、ナチュラルキラー細胞を誘導するという。直接的な殺細胞効果と抗癌免疫を誘導し、全身効果も期待できるとしている。

 臨床研究の対象となるのは、(1)遠隔転移の有無にかかわらず、内分泌療法中に再燃してきた前立腺癌患者と、(2)外科的切除の適応があるが術後再発の可能性が高いと考えられる、ハイリスク限局性前立腺癌患者(初発・未治療)。

 (1)は、治療法が少なくなった患者に対するもので、4週間隔で2回、癌部にウイルスを投与し、8週目で効果判定を行う。効果を認めれば治療を継続する。(2)は、いわゆるネオアジュバントを目指すもので、2週間ごとに2回投与を行い、その後、6週間後に前立腺摘除術を受ける。

 予定患者数は、(1)、(2)群ともに12人から16人を予定している。両群ともウイルスの投与量によって3段階に分けており、副作用の発現がなければ、レベル1(1×10の10乗個)に3人、レベル2(1×10の11乗個)に3人、レベル3(1×10の10乗個)に6人を登録する計画だ。副作用が発現した場合にはそのレベルにさらに3人追加する。