米Chicago大学医療センターのScott Eggener氏らは、低リスクと判定された前立腺癌患者の一部については、治療ではなく慎重な観察を選択しても予後不良にならない可能性を示した。多施設試験の結果は、Urology誌2009年4月号に報告された。

 前立腺癌に対する放射線治療外科的治療は有効だが、失禁勃起不全といった有害事象を引き起こしうる。今回、研究者たちは、2回の生検を行って患者の病期を厳格に評価し、注意深い観察が適用可能な患者を選出すれば、病気の進行リスクを高めることなく生活の質が維持できることを示唆した。

 研究者たちは昨年、治療と注意深い観察のどちらを選ぶかという判断において、生検を2回行うことの重要性を報告している。これによると、観察の適用が予定された患者のうち約30%は、2度目の生検後、その結果に基づいて治療開始の提案を受けたという。

 今回の研究は1991〜2007年に行われた。対象は米国とカナダの4病院で登録された262人(年齢の中央値は64歳)。組み込み条件は、75歳未満、PSA値が10ng/mL以下、臨床病期はT1-T2a、グリーソンスコアは6以下、初回コア生検で採取された標本のうち癌細胞陽性は3つまで、とした。この条件を満たす患者が前立腺全摘出術を受けた場合、5年間の生化学的再発(PSA値上昇)リスクは、5%未満と推定されるという。

 患者は、病期を確認するため、2度目の生検を受けた。初回生検からの期間の中央値は6カ月だった。2度目の生検の日から全員に対して注意深い観察を開始。その後6カ月間は治療を行わなかった。診察とPSA検査は6カ月ごとに実施。当初18カ月以内と、それ以降1〜3年ごとの生検を勧めた。

 ベースラインのPSAの中央値は4.9ng/mL。2度目の生検で癌が見つかった標本数が2以下の患者は178人(78%)だった。追跡期間の中央値は29カ月。50人(19%)が5年以上の追跡を受けた。

 追跡期間中に生検を受けた患者は157人(60%)。うち19人にグリーソンスコアを指標とする進行が見られた。15人が治療を受け、4人は治療開始を拒否した。4人はその後10〜25カ月追跡されたが、転移は見られなかった。

 全体では43人が治療を受けた。理由は様々だったが、生検で進行が認められ担当医から治療開始を勧められた、患者自身の考え方の変化、などが多かった。治療を受けた患者のうち41人(95%)は、治療終了後から中央値23カ月間、転移が認められない状態を維持していた。コホート全体で3人が死亡していたが、すべて前立腺癌以外の原因による死亡だった。

 著者らは、観察から治療への切り替えが必要になる患者をベースラインの患者特性に基づいて選別できるかどうか検討した。

 治療に切り替えるリスクが高いのは、2度目の生検でも癌が見つかった患者(2度目の生検では見つからなかった患者と比較すると、ハザード比2.23、1.23-4.06、p=0.007)と、2回のコア生検の癌陽性標本数の合計が多かった患者(2回合わせて1〜2標本だった患者に比べ、3〜4標本ではハザード比1.4、1.11-1.94、5〜6標本なら6.3、1.72-15.36、p=0.002)だった。

 年齢、PSA値、臨床病期、前立腺容積、2回のコア生検で採集された標本の合計は、治療開始の予測因子ではなかった。

 得られた結果は、2度目のコア生検で標本の中から癌が見つかる患者と、2回のコア生検で癌陽性標本数が多い患者で、治療が必要になる可能性が高いこと、しかし当初から治療を行わなくても、予後は良いことを明らかにした。したがって、一定の条件を満たす低リスク患者には当初は慎重な観察を適用し、必要なら治療を開始する方法も安全と考えられた。