スイスRoche社とBrest International GroupBIG)は3月11日、現在進行中のフェーズ3試験HERAHERceptin Adjuvant)において、HER2陽性の早期乳癌患者に対する1年間のトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)治療の効果は、治療終了から4年後まで継続して認められることが明らかになったと発表した。HERA試験の中間結果の詳細は、スイスで開催されたPrimary Therapy in Early Breast Cancer会議で報告された。

 以前は、HER2陽性乳癌の予後は悪いと考えられていた。が、2005年に初めて公表されたHERA試験の予備的な結果は、トラスツズマブを用いれば癌再発を予防でき、無病生存期間の延長が期待できることを示した。

 大規模フェーズ3試験HERAでは、5000人を超えるHER2陽性早期乳癌患者が登録され、トラスツズマブ治療を行うグループ(治療群)と行わないグループ(対照群)に割り付けられた。治療群には、術後の化学療法と、または放射線治療が完了した後に1年間トラスツズマブを投与。投与終了後の追跡は現在も続いている。

 この試験の主要評価項目は無病生存期間、副次的評価項目は全生存期間と心臓に対する安全性に設定されている。

 2005年に公表された中央値2年の追跡結果は、トラスツズマブ投与による無病生存率の有意な向上を示した。対照群に比べ治療群で、再発の相対リスクは36%低く(ハザード比0.64、95%信頼区間0.54-0.76、p=0.0001)、死亡リスクも34%低かった(ハザード比0.66、0.47-0.91、p=0.0115)。

 この結果をうけて、対照群の女性の半数以上がトラスツズマブの使用を希望し、実際にトラスツズマブ投与を受けた。

 今回新たに報告されたのは、中央値4年の時点の安全性と有効性に関するデータだ。

 分析は、当初の割り付けに基づいて行われた(ITT分析:2年の時点でトラスツズマブ治療を開始した対照群の女性も、対照群に含めて分析)。

 対照群に比べ治療群の再発リスクは25%低かった(ハザード比0.76、p=0.0001)。無病状態を維持していた患者は、治療群が約79%、対照群が73%で差は有意だった。治療群では約90%の患者が生存していた。

 重症の心機能不全の発生はトラスツズマブ群でも0.8%と低く、この治療の長期にわたる安全性が示された。

 2年の時点の結果と比較すると、再発リスク低減幅が縮小しているが、これは、当初は対照群に割り付けられ、その後、トラスツズマブ使用を開始した女性も、この治療の利益を得たことを示唆する。

 今回の発表では、トラスツズマブ投与への移行は、中間で22.8カ月(<1-52.7)遅れている。この結果について、愛知県癌センター中央病院乳腺科部長の岩田広治氏は、「対象者の詳しい内訳が示されなかったので、はっきりとはいえないが」と前置きしたうえで、「約2年遅れでも、術後療法としてトラスツズマブ投与を受けることは意味があることを示したともいえる」「再発していなければ、手術後年数がたっていたとしても、術後薬物療法としてトラスツズマブ投与をするべきなのかもしれない」と語った。ただし、「費用の問題などもあり、難しい選択になる」とも付け加えた。

 HERA試験の最終結果は2011年に得られる見込みだ。

 現在同社は、同様の大規模試験をHERA以外に3件実施している。NSABP B-31、NCCTG N9831、BCIRG 006と名付けられた試験で得られるデータは一貫してトラスツズマブがHER2陽性乳癌患者の生存期間を延長することを示している。

■スイスRoche社のリリース
Herceptin proven to benefit women with HER2 positive early breast cancer – latest results from the HERA study