広く行われている前立腺特異抗原(PSA)検査前立腺癌死亡率を低下させていることに疑いの余地はないが、検査で得られる利益が検査費用やリスクを下回るのは、どのくらいの年齢からだろうか。

 米国立老化研究所(NIA)が進めているボルチモア加齢縦断研究BLSA)の研究者とジョンスホプキンス大泌尿器科の共同研究から、75歳以上でPSA値が3ng/mL未満の場合、その後に前立腺癌で死亡した被験者はいないことが明らかになった。

 このような男性では、ルーチンのPSAスクリーニングを中止しても、未検出の致死的疾患の発生率は増加しないと考えられ、不要な治療を回避し、診断費用を削減できる可能性がある。詳細はJournal of Urology誌2009年4月号に掲載される。

 PSAスクリーニングは、5〜25年で致死的になる可能性がある癌を検出でき、40〜50代の男性では利用が増加している。しかし、致死的にはならない癌を検出することもあり、その割合は30%にも上るという。75歳以上では、前立腺癌以外の原因による死亡の方が多いため、PSAスクリーニングの継続は不要な治療につながる可能性がある。

 研究グループは、前立腺癌を有する被験者122人、前立腺癌のない被験者727人の計849人を対象に、連続的なPSA測定を行った。

 その結果、75歳以上でPSA値が3ng/mL未満の場合、前立腺癌で死亡した被験者はおらず、ハイリスクの前立腺癌に進行したのは1人のみであった。一方、PSA値が3.0ng/mL以上の場合は、年齢にかかわらず、前立腺癌による死亡の確率は上昇し続けた。

 筆者の一人、Edward M. Schaeffer氏は、「前立腺癌をスクリーニングする最適な実施方法についてはまだ結論が出ていない。私たちが得た結果では、PSA値が3ng/mL未満の75〜80歳の男性は、生涯を通してハイリスクの前立腺癌と診断される可能性は低い。したがって、このような男性はPSA検査を中止する理想的なターゲットであり、スクリーニングの費用や、不要な検査・治療による有害事象などを劇的に削減できると考えられる」と話す。

 Schaeffer氏は、本試験で得られた所見は大規模試験で確認する必要があること、75歳以上でも、前立腺癌の臨床徴候の発生については、監視を続けるべきだと強調していた。