ホルモン補充療法HRT)と乳癌発症リスクとの関連性を示唆する研究結果が示された。研究は、WHI(Women's Health Initiative)試験結果を解析したもの。詳細はNew England Journal of Medicine誌2009年2月5日号に掲載された。

 HRTは閉経後女性更年期症状の治療法として、欧米では多くの女性たちに処方されてきた。しかし、2002年のWHIの中間報告以降、米国ではHRTの使用が激減。その後、乳癌の発生率も減少したことから、HRTと乳癌発症リスクとの関連性が指摘されてきた。

 同研究では、WHIの試験結果を解析し、WHIの観察研究コホート群において、一定期間の乳癌発生率を乳癌のリスク因子マンモグラフィの受診頻度などをみながら、ホルモン補充療法と乳癌発生との関連性を評価した。

 WHIは、1993-1998年にかけて実施された無作為化臨床試験。対象となったのは50-79歳までの閉経後女性1万6608人で、結合型エストロゲン0.625mg+酢酸メドロキシプロゲステロン2.5mgを毎日投与する群とプラセボ群とに無作為に割り付けられた。

 他方、観察研究コホート群は1994-2005年の間、HRTを使用していない2万5328人と使用している1万6121人を対象に評価した。両群ともに過去に浸潤性乳癌の既往や子宮摘出はなく、マンモグラフィなどによる検査で乳癌を示す徴候もなかった。

 臨床試験では、最初の2年間はプラセボ群と比べてHRT投与群の方が乳癌と診断される女性は少なかったが、5.6年の介入期間中に投与群で乳癌と診断される数が増加した。

 乳癌リスクはHRTの使用によって上昇がみられたが、HRTを中止すると急速に減少した。また、観察研究群における乳癌の発生率は、初期にはプラセボ群と比較して投与群が2倍だったが、その差は2年で減少した。

 LA BioMedのチーフ研究者で、同研究の筆頭執筆者であり、治験責任者でもあるRowan Chlebowski氏は、「これらの研究結果から、米国内において乳癌の発生率が最近減少している要因として、エストロゲン+黄体ホルモンの使用が減少したことと関連しているという仮説が支持できます」とし、さらに、「特に5年以上の投与を計画している場合は、これらの調査結果を考慮すべきです」と述べている。

 だが一方で、WHI試験に関しては、対象となった女性の年齢が、50-59歳が33.9%、60-69歳が45.4%、70-79歳が20.7%と高齢であったことや、BMI値が25未満が30.5%、25-30未満が35.3%、30以上が34.2%(数値はいずれもHRT投与群)と肥満傾向にあったことなどを指摘する専門家がいるのも事実だ。

 日本国内では2004年に、「ホルモン補充療法が乳癌の診療に及ぼす影響とその対策に関する研究」(厚生労働省癌研究助成金による研究)が実施され、HRTと乳癌との関連性については否定的な結果が報告されている。また、今年4月以降には、日本初となるホルモン補充療法ガイドラインが発表される予定だ。

 2002年のWHIの中間報告以来、HRTと乳癌との因果関係については様々な議論が繰り返されてきた。今回の研究結果の発表を受け、また新たな議論が展開されそうだ。