抗癌剤同士、抗癌剤と他の薬剤や、食品サプリメントの間では相互作用を起こす場合があり、抗癌剤の効果が高まりすぎて重篤な副作用を引き起こしたり、効果が低く抑えられてしまう可能性が指摘された。2月7日から8日に沖縄県宜野湾市で開催された第23回日本癌看護学会学術集会のランチョンセミナーで、京都大学医学部附属病院外来化学療法部の石黒洋氏と、日本看護協会神戸研修センターの菅野かおり氏の講演で紹介されたもの。

 医療に携わる側は、薬剤に関する知識はもちろんのこと、患者の食生活にも注意を払うべきであること、また、患者側もどういった食生活をし、サプリメントを服用しているかを医療従事者に伝えることの重要性が改めて認識された。

 講演では、まず石黒氏が抗癌剤の一般的な特徴を説明した。抗癌剤は基本的に毒であり、効果が高く副作用が少ない安全に治療できる治療域が狭いので、十分に注意して使用すべき薬剤であることを指摘した。推奨用量の3割増で重篤な副作用頻度が上昇すると説明した。また、投与量が同じでも血中濃度は大きくばらつくことも指摘した。

 次に石黒氏は、抗癌剤の多くは肝臓で代謝され、特にシトクロムP450CYP)であるCYP3A4によって多く代謝されると解説した。高度にCYP3A4を阻害するアゾール系抗真菌薬マクロライド系抗生剤を併用すると、内服液で5倍以上、点滴薬で3倍程度、抗癌剤の血中濃度が上昇する場合があることを説明した。さらにカルシウム拮抗剤など、中等度にCYP3A4を阻害する薬剤を併用した場合は、内服薬で2から5倍、点滴薬で2倍程度の濃度上昇がありうるとした。また、H2ブロッカーグレープフルーツジュースなど、軽度にCYP3A4を阻害するものでは内服薬で1.5倍、点滴薬で1.3倍程度に濃度が上昇する抗癌剤があることを指摘した。

 一方、菅野氏は、多くの場合、癌化学療法は2剤以上の多剤併用療法が行われており、併用する薬剤によっては、作用・副作用を強めたり、作用を弱めてしまう場合があることを解説した。特に抗癌抗生物質やプラチナ製剤、抗体療法薬などを除く多くの抗癌剤は、石黒氏が指摘したのと同様に代謝酵素CYP3A4で代謝を受けるので、併用に注意が必要とした。

 さらに、菅野氏はCYPで直接代謝を受けない抗癌剤であっても、CYPの分子種の活性を阻害するものもあること、グルクロン酸転移酵素UGT1A1)によって代謝を受ける薬剤の併用にも注意すべきだとした。また、投与順序によって、効果、副作用が強まってしまうケースがあることも紹介した。

 次に菅野氏は抗癌剤と食事・サプリメント間の薬物相互作用について解説した。まず注意すべき点として、食事と服薬のタイミングが重要であると指摘、食べ物や飲み物によって消化管から吸収される薬の量が増加あるいは低下すること、胃の内部状況によって薬剤の吸収に変化があるため、空腹時あるいは食後服用の指示がある場合は必ず守ることが大切とした。

 菅野氏も、グレープフルーツおよびグレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリンという成分が小腸上皮細胞中のCYP3A4を阻害し、CYP3A4で代謝される抗癌剤を併用すると薬物の消化管吸収量が増加する可能性を指摘した。サプリメントでは、まず、ビタミンAと抗癌剤の併用でビタミンAの過剰摂取やビタミンAによる代謝酵素阻害が起こりうることを説明した。次に抗うつ作用があるといわれているサプリメントであるセントジョーンズワートは、CYP3A4などの薬物代謝酵素を誘導し、その結果として、抗癌剤の血中濃度を低下させることが報告されていることを紹介した。