米Texas大学M.D. Anderson癌センターのKelly K. Hunt氏らのグループは、一方の乳房に癌が見つかり、予防的にもう一方の乳房(対側乳房)も切除した患者を対象に、対側にも癌が発生するリスクを予測するために役立つ臨床病理学的因子の発見を試みた。その結果、対側乳癌の独立した危険因子として、(1)乳癌リスク推定モデルによる5年発症率が1.67%以上、(2)最初に見つかった乳癌が浸潤性小葉癌、(3)癌が見つかった乳房に腫瘍が複数存在、の3つが浮かび上がった。詳細は、Cancer誌2009年電子版に1月26日に報告された(誌面掲載は3月1日号の予定)。

 乳癌と診断された女性の一部は、本人の医療歴や家族歴、病理検査の結果などに基づいて、その時点では癌が見つからない対側乳房の予防的な切除を医師から勧められる。再発を恐れ、自ら対側乳房の切除を考える患者も少なからず存在する。米国では、ステージI-IIIの乳癌で、対側乳房切除を受けた患者の割合が、1998-2003年の間に150%増加したという。

 患者の多くは、切除すれば癌リスクは下がると考えているが、実際には、対側の乳房が癌になるリスクより、乳癌が全身性に転移するリスクの方が高い患者がほとんどだ。

 対側乳房切除の利益が十分に大きい患者を特定することは、現在のところ非常に難しい。そこで著者らは、対側乳癌のリスクをより正確に予測するための危険因子の同定に取り組んだ。

 研究者たちは、2000年1月から2007年4月にM.D. Anderson癌センターで対側乳房の切除を受けた542人の女性を分析の対象とした。

 うち435人の対側乳房には病理学的異常は見つからなかった。25人(4.6%)については、切除された対側乳房に癌が見つかった。82人(15%)の患者の切除組織には、対側乳房の癌リスクが中から高であることを示す異常(非定型乳管過形成、非定型小葉過形成、非浸潤性小葉癌)が見つかった。

 多変量解析により、対側乳癌の独立した危険因子であることが判明したのは以下の3特性だった。乳癌リスクの推定に広く用いられているGailモデルにおいて5年乳癌発症率が1.67%以上(オッズ比3.5、P=0.01)、最初に見つかった乳癌が浸潤性小葉癌(オッズ比は3.4、P=0.01)、癌が見つかった乳房には腫瘍が複数存在(オッズ比3.1、P=0.004)。

 Gailモデルは、主に乳癌ではない女性に用いられる乳癌リスク予測モデルで、年齢、初潮年齢、それまでに受けた乳房生検の回数と結果、初産年齢、第一度近親者のなかの乳癌患者の数に基づいて、5年間に浸潤性乳癌リスクを推定する。1.67%以上がハイリスクと判定される。

 なお、乳癌診断時の年齢が50歳以上、癌が見つかった乳房には中-高リスクの組織異常も存在、という2つの条件は、癌リスクが中-高を示す異常が対側乳房に存在することを予測した。

 エストロゲン受容体の発現、プロゲステロン受容体の発現、人種については、対側乳癌の間に有意な関係は認められなかった。

 単一施設で行われた後ろ向き研究であるため、今後、さらに検証が必要だが、対側乳癌の危険因子に関するこうした情報が蓄積されれば、予防的切除を受ける女性を減らせるはずだ。さらに、低リスク、中リスクの女性がより穏やかな予防法を選ぶことも可能になるだろう。