肝細胞癌の治療法の1つとして知られている肝動脈化学塞栓療法TACE)は、造影剤と抗癌剤を注入し、その後ゼラチンスポンジなどの塞栓物質を注入して肝動脈を塞ぎ、癌を壊死させる。近年、薬剤溶出性ビーズdrug eluting bead;DEB)を使用したDEB-TACEが登場、従来のTACEよりも有効だったと、オーストリア・ウィーン大学のR.Lencioni氏が2009 Gastrointestinal Cancers SymposiumASCO GI)の一般口演で報告した。

 フランスやドイツを中心とする欧州23施設の参加により、Child Pugh分類AかBにとどまる肝細胞癌患者212人(男性185人、女性27人、平均年齢67歳)が集まった。肝細胞癌の状態や再発の有無などによって、患者をDEB-TACE群102人とTACE群110人の2群に無作為に割り付けた。途中での脱落者を除き、治療6カ月後のDEB-TACE群93人、TACE群108人の結果が分析された。

 腫瘍縮小を示す奏効率については、全体で見ると完全奏効はDEB-TACE群27%、TACE群22%、部分奏効はDEB-TACE群52%、TACE群44%、病勢コントロールはDEB-TACE群63%、TACE群52%と、DEB-TACE群の方が優れている傾向を示したが有意差はなかった。ただし、Child Pugh分類Bの患者や再発した患者など、病態の進行した患者で奏効率を比較したところ、DEB-TACE群が有意に優れていた(p<0.05)。

 また、DEB-TACEの特徴は、抗癌剤(ドキソルビシン)をビーズの中に封じ込めておくことで、血液中の薬物濃度を従来よりも低くでき、有害事象の頻度を抑えられることだ。これを裏付けるように、治療に関連する何らかの有害事象が発生した割合はTACE群79%に対し、DEB-TACE群58%にとどまり、中でもドキソルビシンに関する有害事象の発生割合はTACE群ではDEB-TACE群の3倍近くと、明らかな差がついた(p=0.0001)。

 R.Lencioni氏は、「有害事象の内訳をみると、肝毒性が大きく抑制できていた。ASTやALTといった肝機能を示す数値にも有意差がみられ(p<0.01)、病態の進行による死亡も低く抑えられた。従来のTACEの対象になりにくかった、より進行した肝細胞癌患者でも有効性が期待できる」と話した。