米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、この1年間で最も重要と考えられる研究を総括した「Clinical Cancer Advances 2008: Major Research Advances in Cancer Treatment, Prevention and Screening」(以下リポート)を発表した。セツキシマブによる進行性非小細胞肺癌の生存延長や、PEG化インターフェロンによる黒色腫の無再発生存の改善など12件が選ばれている。リポートは12月22日、Journal of Clinical Oncologyのウエブサイトで公開された。

 このリポートは21人の腫瘍医からなる編集委員によって作成され、「治療困難な癌に対する治療」、「新薬承認」、「癌再発抑制」、「個別化治療」、「癌リスクの減少」、「治療アクセスの改善」という6分野において、治療を大きく前進させた12件の研究が選ばれた。

 「治療困難な癌に対する治療」では、新たな治療選択として、進行性非小細胞肺癌におけるセツキシマブ、および早期膵癌の術後におけるゲムシタビンによって、生存が改善されたことが取り上げられた。「新薬承認」としては、HER2陰性の進行性乳癌の適応で、ベバシズマブ(商品名「アバスチン」)がパクリタキセルとの併用で承認されたこと、さらに慢性リンパ球性白血病のbendamustine(商品名「Treanda」)の承認が治療に大きな影響を与えたとしている。

 「癌再発抑制」としては、早期乳癌において、タモキシフェンの5年間投与後のアロマターゼ阻害剤を含むホルモン治療、およびビスホスホネート製剤ゾレドロン酸が再発リスクを減少させたことを取り上げた。また黒色腫で、大規模な臨床試験によって、PEG化インターフェロン(インターフェロンにポリエチレングリコールを結合させた製剤)が無再発生存を有意に改善させたことは、重要な進歩であるとした。

 「個別化治療」では、癌治療は固有の遺伝子に合わせて行われつつあるとし、KRAS遺伝子の野性型をもつ結腸直腸癌患者でセツキシマブの有用性が認められたことを取り上げた。「癌リスクの減少」では、疫学研究によって、経口避妊薬の使用と卵巣癌の発症リスク減少の関連性が明らかになったこと、またヒトパピローマウイルス(HPV)を原因とした頭頸部癌の増加はオーラルセックスの増加が関与しており、現在は子宮頸癌のみを対象としているHPVワクチンの新たな役割を示しているとしている。

 そして、「治療アクセスの改善」として、2020年までに患者数は55%増加すると予想し、癌治療に当たる医師を増やす必要性を示した研究を重要視している。

 さらにリポートでは、癌研究を進めるため政策担当者に対し、癌研究資金を増やし、臨床試験への参加を促すための改善を行うよう勧告した。ASCO会長Richard L. Schilsky氏は、「このリポートで紹介されたそれぞれの研究は、癌患者と治療者にとって新たな希望となる」と述べた。その一方で、米連邦政府が提供する資金は少なく、「すでに研究は減速の傾向を見せている。重要な臨床研究はますます海外で実施され、優秀な若い医師は腫瘍学の分野ではチャンスが少ないと見て、他の専門を選んでいる」と危機感をつのらせた。