乳房温存療法と術後に行われる放射線療法は、ガイドラインが作成されて以降、急速に普及、浸透してきていることが、日本の「医療実態調査研究」(JPCS)を経年的に分析した結果、明らかになった。京都大学大学院医学研究科放射線腫瘍学・画像応用治療学の山内智香子氏らが、12月10日から14日に開催された第31回サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表した。

 1999年に日本乳癌学会が「乳房温存療法ガイドライン」を発表し、2005年には「標準的な乳房温存療法の実施要項の研究」班、いわゆる霞班のガイドラインも発表されている。山内氏らは、これらのガイドラインがその後の治療にどのような影響を与えたかを調べるため、放射線療法の対象である癌の治療過程を調べたJPCSにおいて、調査時期の異なる3つの調査を基に経年的変化を分析した。

 第1の調査(JPCS1)では、1995〜1997年に乳房温存療法を受けた72施設865人の患者のデータが訪問調査によって集められた。第2の調査(JPCS2)は1999〜2001年に治療された66施設746人、第3の調査(JPCS3)は2003〜2005年および現在までに乳房温存療法を受けた55施設362人の患者のデータが集められた。

 その結果、乳房温存術のうち乳房の4分の1を切除する四分円切除術は、JPCS1では57%の患者で実施されていたが、JPCS2では30%、JPCS3は27%と、経年的に切除範囲を縮小した手術が行われている傾向が示された。センチネルリンパ節生検は、JPCS2では12%だが、JPCS3では29%に行われていた。

 乳房温存術後の放射線照射については、ガイドラインで治療時の体の位置の再現性を高めるために固定具の使用が勧められている。調査の結果、固定具の使用はJPCS1では32.6%、JPCS2は52.9%、JPCS3は74.9%と順に使用率は高くなっていた。また治療計画法として推奨されているCTシミュレーションの使用も、JPCS1では22.2%、JPCS2でも26.7%にすぎなかったが、JPCS3では67.3%に使われていた。

 乳房照射にあたっては、日本人の乳房サイズには10MV以上は不適切とされ、4〜6MVのX線が使われることが多い。調査では、JPCS1では10MV以上を9.2%の患者で使用されていたが、JPCS2で2.6%、JPCS3では1.4%と減少していた。

 これらの調査結果を通して、「乳房温存療法のためのガイドラインが、実地臨床に浸透してきていることがわかった」と山内氏は話した。