米Norris総合癌センターの研究者たちは、乳癌患者の中でラパチニブから利益を得られるのはHER2遺伝子に増幅が見られる人々であることを明らかにした。詳細は、Clinical Cancer Research誌2008年12月1日号に報告された。

 ラパチニブは経口型化学療法薬で、HER2(ErbB2)とEGF受容体(ErbB1)を阻害する。米国では、アントラサイクリン、トラスツズマブ、タキサン系薬剤の投与歴があり、HER2過剰発現が認められる転移性乳癌患者に、カペシタビンと併用されている。日本でも2009年の承認獲得が予想されている。ただし、どんな特徴を持つ患者がこの薬剤から利益を得られるかについて詳細に分析した研究は、今まであまりなかった。

 研究者たちは、ラパチニブ治療に最適の患者を選出するための条件を探すために、2件の無作為化フェーズIII試験の被験者の乳癌細胞に見られるバイオマーカーの状態と臨床転帰の関係を調べることにした。

 被験者から採取した標本を対象に、HER2遺伝子の増幅、HER2遺伝子の発現上昇、HER2たんぱく質レベル、EGF受容体(EGFR)遺伝子の発現量、EGFRたんぱく質レベルを測定し、それぞれの患者のアウトカムと照合した。

 その結果、HER2の増幅がラパチニブに対する反応性と相関することを明らかにした。HER2増幅が見られた集団では、無進行生存期間の有意な延長(約50%改善)が見られた。増幅のレベルが高い女性のみならず低い女性も、ラパチニブから利益を得ていた。

 一方、HER2陰性の患者は治療に反応しなかった。EGFRのステータスは治療結果と関係していなかった。

 なお、今回の研究は、遺伝子増幅検査の精度に関する問題を明らかにした。学究的な参照/研究ラボに比べ大規模な商業的検査ラボの検査精度は低く、Her2増幅のある女性の約10%を増幅なしに分類していたという。これは、本来はラパチニブの恩恵を受けられる女性が治療機会を失うことを意味する。

 最適な治療を選択するためには正確な検査の実施が欠かせない。ラボの検査能力向上が望まれる。