米Durham退役軍人医療センターと米Duke大学医学部の研究者たちは、スタチンの使用が前立腺特異抗原(PSA)値の有意な低下をもたらすことを、国立がん研究所(NCI)ジャーナル電子版に2008年10月28日に報告した。これまでに行われた疫学研究は、スタチンが進行前立腺癌リスクを低減することを示唆していた。しかし、スタチンとPSA値の関係を調べた研究はほとんど無かった。

 著者らは、1990〜2006年の間に同退役軍人医療センターでスタチンが処方された1214人の男性の医療記録を調べた。PSA値の変化は、スタチン投与前2年間に測定された値と、投与開始から1年以内の測定値を比較することにより調べた。

 スタチン投与開始年齢の平均は60.3歳。投与前のPSAの中央値は0.9ng/mL、LDL-c値の平均は144mg/dLだった。スタチン使用開始後、患者のPSA値は4.1%、LDL-cは27.5%低下していた。いずれもP<0.001で統計学的に有意な低下だった。

 PSAの低下幅は、当初PSA値が高かった患者で大きかった。また、PSA値の低下とLDL-c値の低下の間には相関が見られた。LDL-c 10%低下あたりPSA値は1.64%低下しており、この関係はLDL-c値で調整しても変化しなかった。

 スタチンの作用が顕著だったのは、前立腺の生検が考慮されるレベルのPSA高値(2.5ng/mL以上)を示し、スタチンによるLDL-c値低下が最も大きかった(最高4分位群に属する41%超の低下を示した)サブグループで、PSA値は17%低下していた。

 これらの結果の解釈には注意が必要だ。スタチンによるPSA値の低下は、スタチンが前立腺の状態に影響を与えることを示唆する。が、PSA値低下は癌リスクの低下に直結しない。また、PSA値の4.1%低下は、臨床的に意義のあるレベルではない。

 一方、スタチンがPSA値を下げるとすれば、前立腺癌スクリーニングにおいてスタチン使用者の癌が見逃される危険性がある。スタチンによるPSA値の低下が前立腺癌リスクに及ぼす影響を知るためには、かなり長期的な研究が必要となる。