エストロゲン受容体(ER)陽性はERの活性を必ずしも反映していないことが、患者の癌組織に蛍光たんぱく質を導入した研究で明らかになった。ER陽性だけでなく、ER活性を見ることで、ホルモン療法など治療の効果が適切に予測できる可能性がある。10月28日から30日に名古屋市で開催されている第67回日本癌学会学術総会で、東北大学大学院医学系研究科の林慎一氏らが発表した。

 DNAマイクロアレイによる遺伝子発現のクラスター解析で、乳癌はluminal A、B/C、normal breast-like、ERBB2、basal-likeのサブグループに分けられることが近年明らかになってきた(Proc Natl Acad Sci 2003;100(14):8418-23)。日本人ではluminalタイプが8割を占め、欧米に比べてluminal Bの割合が多いといわれる。

 luminalタイプは、ER陽性を示す。その一方で、ERが陽性であっても、3分の1から4分の1はホルモン療法に反応しないといわれる。

 そこで林氏らは、ER陽性だけでなく、別の指標が必要と考え、個々の患者のエストロゲンシグナルの状態を分析した。41のER応答性遺伝子群を解析した結果、応答性が認められた群ではER陽性が多いが、認められなかった群でもER陽性が確認された。

 次に、個々の患者の転写活性を見るため、患者の癌組織を使い、緑色蛍光たんぱく質(Green Fluorescent Protein, GFP)による蛍光発光で、ER活性を定量化した。その結果、62人において、ERとの相関は見られるものの有意ではなく(p=0.1427)、プロゲストロン受容体では相関が認められた(p=0.0403)。

 ER活性とたんぱく量は必ずしも一致しないことから、「臨床的にER活性とたんぱく量のどちらが有効なのかを検討する必要がある」と林氏は述べた。さらに、luminalの中でも、「免疫染色だけでなく、遺伝子発現プロファイルやエストロゲンシグナルの状態、あるいは、癌の微小環境も調べていくのが理想的だろう」と話した。