免疫グロブリン(Ig)のFc領域に対する受容体の遺伝子多型が、HER2陽性の転移性乳癌におけるトラスツズマブの臨床効果を予測する可能性のあることが明らかになった。国立がんセンター中央病院の田村研治氏らの研究によるもの。10月28日から30日に名古屋市で開催されている第67回日本癌学会学術総会で発表された。

 免疫グロブリン(Ig)G1抗体は、癌細胞の表面抗原と結合し、その抗体のFc領域はナチュラルキラー細胞(NK細胞)などのFc受容体(FcR)と結合することで、抗体依存性細胞障害反応(ADCC)を示す。トラスツズマブの作用機序の1つがADCC活性であるといわれている。

 これまでに、FcRの遺伝子多型の1つであるFcγR3A-V158F多型が、リツキシマブを一次治療として投与した濾胞性リンパ腫で、奏効率と関連していることが報告されている。また、大腸癌では、FcγR2A-H131RおよびFcγR3A-V158F多型が、セツキシマブによる三次治療で、転移性乳癌でも、FcγR3A-V158F多型が、トラスツズマブとパクリタキセルの併用による一次治療で、臨床効果との関連性が報告されている。

 今回の研究では、HER2陽性で、トラスツズマブ未治療の乳癌患者に対して、術前補助化学療法としてCEF療法(シクロホスファミド、エピルビシン、5-FU)の後、パクリタキセルとトラスツズマブの投与を行った。さらに、転移性乳癌患者を対象に、トラスツズマブのみの投与を行った。

 その結果、転移性乳癌患者において、多型の1つであるFcγR3A-158V/V遺伝子型だった15人では、PR(部分奏効)+CR(完全奏効)は6人(40%)だったが、V/F型もしくはF/F型の16人では、PR+CRは2人(13%)と、臨床効果に有意な違いが認められた(p<0.05)。

 一方、術前補助化学療法では、FcγR3A-158V/V型だった7人ではPR+CRは4人(57%)、V/F型もしくはF/F型の8人ではPR+CRは1人(13%)で、V/V型において臨床効果との関連性が見られたが、有意ではなかった。

 これらのことから、研究グループは、FcγRを介したADCCが、トラスツズマブの臨床効果において、重要な役割を果たしている可能性があるとしている。