分子標的型抗癌剤のエンザスタウリンのわが国で行われたフェーズ1試験の結果が明らかになった。1日500mgまで患者は投与に十分耐えることができ、一部の腫瘍で抗腫瘍効果が確認された。500mg投与で血中濃度も有効性を期待できるレベルを超えていた。これらの結果は欧米でのエンザスタウリンの試験結果と同様のものだった。成果は10月21日から24日にスイスジュネーブで開催された第20回EORTC-NCI-AACR Symposium on Molecular Targets and Cancer Therapeuticsで神戸大学大学院医学系研究科内科学講座腫瘍内科特命准教授の向原徹氏によって発表された。

 エンザスタウリンは経口用のセリン・スレオニンキナーゼ阻害剤。PKC-β経路およびPI3K/AKT経路を通じてのシグナル伝達を阻害し、細胞増殖の低下、細胞死(アポトーシス)の増加、血管新生の抑制により効果を発揮する。現在、びまん性大細胞型リンパ腫を対象に国際的なフェーズ3試験が進められており、日本も参加している。

 フェーズ1臨床試験は進行固形癌患者(非小細胞肺癌患者が5人、乳癌患者が3人、消化管間質腫瘍が2人、腎癌が2人、脳腫瘍が1人、その他の癌が10人)を対象に1日当たりの投与量を250mg、375mg、500mg、750mgと増量していき、用量制限毒性の出現が33%以上となった用量を最大耐用量とした。投薬はサイクル0として1回エンザスタウリンを投与して8日間から15日経てから、1サイクル目として1日1回連日投与された。1サイクルは28日間として病状が進行するか受け入れられない副作用が生じるまで投与は続けられた。

 250mg投与群(7人、このうち評価可能患者5人)、375mg投与群(6人、同5人)、500mg投与群(6人、同5人)では用量制限毒性は現れなかったが、750mg投与群(4人、同3人)で2人の患者で用量制限毒性となるQTc延長(可逆的)が出現し、750mgが最大耐用量となった。その他の副作用はグレード3以上のものは750mg投与群で1人リンパ球減少が見られたのみだった。

 全23人の患者で抗腫瘍活性の評価が行われた。RECISTで有効となった患者はいなかったが、1人の中皮腫患者で明らかな画像上の改善が認められた。また、3人の患者(2人が375mg投与群、1人が500mg投与群)で少なくとも6サイクルまでの間安定状態(SD)が得られた。そのうち1人の消化管間質腫瘍(GIST)患者(375mg投与群)は21サイクルの間SDが維持された。