カナダAngioChem社は、2008年10月22日、同社の製品候補のなかで最も開発が進んでいるANG1005の前臨床試験結果と臨床試験の予備的な結果をスイスで開催された第20回EORTC-NCI-AACRシンポジウムで発表した。いずれも、この薬剤の有用性と安全性、忍容性を示唆したという。

 通常は、95%を越える薬剤が血液脳関門により脳への侵入を阻害される。ゆえに、これまでは脳への薬剤送達は難しかった。そこで同社はペプチドベクターAngiopepを開発。このベクターは、薬剤の血液脳関門通過を容易にする。ANG1005は、Angiopepとパクリタキセルを結合した薬剤だ。Angiopepを利用した送達技術は、ぺプチドやモノクローナル抗体、siRNA、その他の生物製剤など、様々な薬剤の脳への送達に適用できると期待されている。

 学会発表された前臨床試験結果は2件だ。

 1件めは、マウスとラットを使った実験の結果で、ANG1005が血液脳関門を通過すること、脳内の濃度はフリーのパクリタキセルを投与した場合に比べ約100倍、グリオーマ治療薬として2006年に日本でも承認されたテモゾロミド(現時点では唯一の原発性脳腫瘍治療薬)に比べ約10倍高いことを示した。ANG1005はマウスのグリオブラストーマ・モデルの生存期間を27%延長し、ラットの腫瘍に有意な縮小をもたらしたという。

 2件めは、癌細胞株とマウス・モデルを用いて行った前臨床試験の結果だ。ANG1005はパクリタキセルと同様の抗腫瘍効果を示すこと、脳腫瘍の増殖を有意に遅らせることを示した。

 米国で現在進行中の2件のフェーズ1/2用量漸増試験の予備的な結果も報告された。どちらの試験も30人の患者を登録、ANG1005を21日ごとに1時間かけて注入している。

 両試験ともに主要エンドポイントは、安全性、忍容性の評価と、最大耐用量の決定にある。2次エンドポイントは薬物動態学的特性の分析、予備的な有効性評価などに設定されている。主な結果は2008年末に得られる見込みだ。

 1件めは、再発性グリオブラストーマの治療を目指す試験で、これまでに治療を受けた12人の患者においてANG1005の安全性と忍容性が示されているという。治療後に切除された腫瘍組織を対象にANG1005の濃度測定も行われる予定だ。

 2件めは、固形癌の脳転移の治療を目的とするもの。これまでに治療が行われた22人の患者に関するデータが報告された。500mg/m2までは安全で忍容性が高いことが示されている。