米Massachusets工科大学やHarvard大学などの研究者たちは、肝細胞癌の再発や生存などに関する遺伝子を特定する目的で、ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いた遺伝子発現プロファイル分析を試み、この方法が予後の推定に有望であることを報告した。詳細はNEJM誌電子版に2008年10月15日に掲載された。

 早期肝細胞癌患者の中から再発リスクの高い人を見分けることは難しい。最近では、ホルマリン固定パラフィン包埋標本のRNAから相補的DNAを検出して遺伝子発現を解析するDASL法(Illumina社)が実用化されたため、著者らが肝細胞癌に応用を試みたのが今回の研究だ。固定標本であれば、保存が容易で長期フォローアップ成績と比較可能な症例が増える。わが国では、虎ノ門病院が標本とデータを提供し共同研究に参加している。

 著者らは、DASL法を適用して307人の肝細胞癌患者から摘出された固定組織を標本とし、マイクロアレイで6100遺伝子の発現プロファイルを調べた。その結果、ホルマリン固定パラフィン包埋標本の90%から解析に値するデータが得られ、同じ標本の再計測では相関係数0.96という高い再現性が得られた。古いものでは24年前の標本も有効だったという。

 残念ながら、腫瘍組織部分の固定標本で発現していた遺伝子には、生存や再発と有意に高い相関を示しているものは見つからなかった。

 次に著者らは、肝硬変における肝細胞癌の多発の可能性などを考慮して、腫瘍部分の周辺組織で発現している遺伝子に着目した。こちらは生存と関連する遺伝子発現パターンが見つかった。予後が良いグループの腫瘍周辺組織では、血漿蛋白(C4、C5、C8、C9、F9)、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH5、ADH6)、アルドケトリダクターゼ(AKR1A1、AKR1D1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH9A1)、チトクロームP450(CYP2B6)、リパーゼ(LIPC)などの遺伝子が発現していた。一方予後が悪いグループでは、固定標本の腫瘍周辺組織で、NF-κB、TNFα、インターロイキン6などの遺伝子が発現していた。

 これらの結果から著者らは、「ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用いた遺伝子解析のフィージビリティ研究として、十分な有効性を示せたものと思う」と結論している。