上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)であるゲフィチニブには進行肺腺癌患者に対して延命効果があることが、国立がんセンター中央病院の解析の結果、明らかとなった。また、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子に変異を持った患者では延命効果がより大きく現れることが分かった。日本人を中心とした患者を対象に、ゲフィチニブ承認前と承認後の症例の経過をレトロスペクティブに解析した結果示されたもので、詳細はJournal of Clinical Oncology誌電子版に9月15日付で掲載された。筆頭著者である国立がんセンター中央病院(現帝京大学腫瘍内科講師)の高野利実氏は「ゲフィチニブの全生存期間(OS)延長効果を示したのはこれが初めて」と語った。

 高野氏らは進行肺腺癌患者で、国立がんセンターで2002年7月から2004年12月までにファーストラインの全身治療が開始された群(グループA)と1999年1月から2001年7月まで(少なくともゲフィチニブが承認される1年前)にファーストラインの全身治療が開始された群(グループB)の検体と臨床データを用いて解析を行った。414人の対象患者(グループAが255人、グループBが159人)のうち、330人がEGFRの突然変異の解析が可能(グループAが200人、グループBが130人)だった。グループAでエクソン19の欠失型変異(DEL)が46人、L858R変異が32人に認められ、グループBではDELが31人、L858Rが27人に認められた。グループAの方がグループBと比べて術後再発症例の割合と全身状態(PS)が不良な症例の割合が有意に高かった。

 グループAの患者のほとんどはEGFR-TKIの投与を受けていたが、15人(8%)はEGFR-TKIの治療を受けておらず、12人(6%)の患者は投与の有無が不明だった。グループBの患者のほとんどはEGFR-TKIの投与を受けていなかったが、19人(15%)はセカンドライン以降でEGFR-TKIの治療を受けていた。

 全生存期間(OS)をグループAとグループBで比較したところ、グループAの中央値が18.1カ月、グループBが12.5カ月、ハザード比0.66(95%信頼区間 0.52-0.84 P<0.001)で有意にグループAの方が長かった。さらに、EGFR変異のある症例に絞って解析したところ、グループAが27.2カ月、グループBが13.6カ月、ハザード比0.48(95%信頼区間 0.32-0.71 P<0.001)で有意にグループAの方が長かった。EGFR変異のない症例に絞った解析では、グループAが13.2カ月、グループBが10.4カ月となり統計学的に有意な延長は見られなかった。EGFR変異と生存期間延長との間には有意な交互作用がみられ(P=0.045)、EGFR変異がゲフィチニブの延命効果を予測する因子であることが示された。

 一方、グループB(ゲフィチニブ承認前症例)の中でOS中央値を比較すると、EGFR変異のある群が13.6カ月、EGFR変異のない群が10.4カ月と、変異のある群が有意に長くなっており、EGFR変異が、ゲフィチニブ治療と関係なく予後を規定する因子であることも示唆された。