手術可能乳癌に対するトラスツズマブを含む術前補助療法を行った場合、病理学的完全奏効(pCR)にならなかった患者の一部にはHER2の発現が低下している場合があることが明らかとなった。トラスツズマブを用いた術前補助療法のpCR率は高く、有用な方法だが、pCRにならなかった場合には、HER2の発現を調べ、術後補助療法の選択などに反映させる必要があるかもしれない。成果は9月5日から7日に米国ワシントンDCで開催されたBreast Cancer Symposium(ASCO Breast)で米Texas大学M.D.Anderson Cancer CenterのE.A. Mittendorf氏が発表した。

 手術可能な乳癌患者を対象にした術前補助療法のフェーズ3臨床試験でトラスツズマブを含む投与法の有効性は既に示されている。フェーズ3試験は、HER2陽性(IHC3+/FISH+)の42人の患者をトラスツズマブを含む群(19人)と含まない群(23人)の2群に分けて行われた。トラスツズマブを含む群にはパクリタキセル(3週おきに225mg/m2)4回とトラスツズマブ(毎週1日目に投与、1回目だけ4mg/kg、2回目以降は2mg/kgを投与)を12回投与し、さらにFECレジメン(1日目に5-FU500mg/m2、ドキソルビシン50mg/m2、シクロフォスファミド500mg/m2を投与)を3週間置きに4回とトラスツズマブを12回投与した。トラスツズマブを含まない群はパクリタキセル投与を4サイクル行い、さらにFECレジメンを4サイクル行った。

 その結果、トラスツズマブを含む投与を受けた群でpCRになったのは65.2%に上ったのに対して、トラスツズマブを含まない投与を受けた群でpCRになったのは25%にとどまった。

 今回研究グループはHER2陽性の143人の患者を対象にパクリタキセル12回、トラスツズマブ12回を行ったあと、FECレジメン4回とトラスツズマブ12回を投与する術前補助療法を行った。

 その結果、pCRになったのは72人で50.3%、部分奏効(PR)となったのは61人で42.7%だった。PRとなった61人のうち23人においてHER2の状態をFISH法で調べた。どの患者も術前療法前はHER2遺伝子の増幅が確認されていた。しかし、術前療法後手術で取り出した検体では、HER2遺伝子が増幅していたのは16人(69.6%)で、増幅していない患者が7人(30.4%)も存在した。

 フォローアップ期間中央値が10.2カ月で再発が起きたのはpCR群では2人(2.8%)、pCRに到達しなかった群では8人(11.3%)だった。特筆すべきはHER2陰性に変わった7人の患者のうち3人が再発したことだ。HER2陰性に変わったメカニズムについては不明だという。