非営利官民共同体の米Translational Genomics Research Institute(TGen)は、2008年9月1日、子宮体癌(子宮内膜癌)に対する新たな治療法開発に結びつく発見をCancer Research誌同日号に報告した。TGen癌・細胞生物学部門のPamela Pollock氏らは、米Washington大学医学部(St. Louis)と共同で、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)2に対する阻害剤が、腫瘍の増殖を阻止して癌細胞を死滅させる可能性があることを示した。

 子宮内膜癌では、KRAS遺伝子の活性化変異が10-30%に、PTEN遺伝子の不活性化変異が26-80%に見られる。内膜癌に関連する遺伝的変異はこれまでにもいくつか同定されているが、創薬標的として有望なものはなかったのが実情だ。

 Pollock氏らは2007年5月に、子宮体癌の約80%を占める類内膜腺癌の細胞の線維芽細胞成長因子(FGF)受容体2に、これまで知られていなかった活性化型変異を発見したと報告している。変異遺伝子は受容体を常に「オン」の状態にし、内膜細胞に増殖信号を送り続ける。これらの変異は類内膜腺癌の16%に認められた。

 今回、Pollock氏に率いられた研究チームは、最新のゲノム・スキャンニング技術を用いて、原発性類内膜腺癌患者由来の標本116検体のシーケンスを行い、FGFR2の変異はKRASの変異と共存することはないが、FGFR2とPTENの変異は同時に見られることを明らかにした。

 次に、FGFR2の活性化型変異を有する内膜癌細胞を対象に、ショートヘアピンRNA(shRNA)を用いてFGFR2をノックダウンすると、また、広範な作用を持つFGFRチロシンキナーゼ阻害薬PD173074で処理すると、細胞周期が停止し細胞死が誘導されることを発見した。

 細胞死はPTENの不活性化変異を持つ細胞とAKT経路の恒常的なリン酸化がある細胞に生じており、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)1/2の活性の大幅な低下を伴っていた。

 これらのデータは、FGFR2に活性化型変異を有する内膜癌には、FGFR2を阻害する治療が有効なことを示唆する。市販されているPD173074が有効であったことから、新たな治療の開発は短期間で可能と期待される。

 研究者たちは既に、米国立癌研究所(NCI)の婦人科癌グループと協力関係を築いており、臨床試験への支援が得られる見込みだという。FGFR阻害剤を子宮内膜癌患者に適用する臨床試験は、1年以内の開始が予定されている。