ヒト・パピローマウイルス(HPV)に対する予防接種の費用対効果は、接種を12歳女児全体に行い、ワクチンによる免疫が長期にわたり持続するのであれば、費用対効果は高いことが、Harvard School of Public Healthの研究グループがシミュレーションした結果で明らかになった。詳細はNew England Journal of Medicine誌8月21日号に発表された。

 米国では、2007年の1年間で、1万1000人以上が子宮頸癌を新たに発症し、3600人が亡くなっている。米国疾病管理予防センター(CDC)は、HPVワクチンの接種を、11〜12歳の女児には定期的な予防接種として、13〜26歳の女児・女性にも「Catch-up」プログラムとして予防接種を勧めている。

 子宮頸癌の70%はHPV16型と18型の感染が原因と見られており、研究グループは、HPV16型と18型感染の性的伝播、およびHPVによる発癌に関するコンピュータモデルを使って、疫学的および人口統計学的なデータから、HPV予防接種の経済的な効果を予測した。

 具体的には、定期的な予防接種として12歳女児に接種した場合、および13才以上の女児に対して「Catch-up」予防接種として18歳、21歳、あるいは26歳まで接種を延長した場合の費用対効果を計算した。

 まず、ワクチンによる免疫は生涯持続し、感染歴のない人ではワクチンの効力は100%であると仮定した結果、12 歳女児に接種した場合の費用対効果は、検診のみに比べて、QALY(質調整生存年)あたり 4万3600 米ドルかかることがわかった。また、12 歳女児の接種に加え、13〜18 歳女児に対しても接種した場合は、QALY あたり 9万7300 米ドル、接種を 21 歳まで延長した場合は12万400 米ドル、26 歳まで延長した場合は 15万2700 米ドルになることが示された。

 さらに、ワクチン接種によって、HPV6型および11型による性器ゆうぜい(genital wart)の予防や、呼吸器の若年性乳頭腫症(JORRP)などの予防効果も含めて計算すると、QALYあたりの費用が子宮頸癌のみの場合よりも低く、全体的に12歳女児では5万米ドル以内、18歳までの接種では5〜10万米ドル、21歳まででも10万米ドル以内となった。しかしワクチンの効力を50%と仮定すると、26歳までの接種では10万米ドルを超える結果となった。

 このため、研究グループは、「12歳女児全般に高い接種率が達成でき、免疫が生涯にわたり持続するのであれば、HPV16型と18型に対するワクチン接種は、(5万米ドル未満であり)経済的に魅力的である」とし、21歳までの接種についても、子宮頸癌以外の疾患の予防を考慮すれば有用であるとした。

 次に、ワクチンによる免疫の持続が10 年までと仮定した場合、12歳女児に対する接種の費用対効果は、QALY あたり 14万4100米ドルになってしまい、「Catch-up」接種では、検診のみよりも費用対効果は低くなることが示された。

 以上のことから、研究グループは、「HPV予防接種における費用対効果は、ワクチンによる免疫持続期間の影響を受ける」とし、「接種を思春期前の女児に広く実施し、18 歳あるいは 21 歳までの女性に対しても接種を勧め、検診の方針を見直すことにより、費用対効果は最適化されるだろう」と結論づけている。