T細胞を活性化し癌細胞を認識させて攻撃するBiTE抗体の一種で、特にCD19を標的とするblinatumomab(MT103/MEDI-538)により、再発性非ホジキンリンパ腫患者の腫瘍の退縮を認めた。この結果はフェーズ1臨床試験で明らかになったもので、Science誌8月15日号に掲載された。

 ドイツMicromet社と米MedImmune社が共同開発したBiTE抗体は、ヒト免疫系の最も強力なキラー細胞であるT細胞に、T細胞が持つ生理学的な攻撃性と同じ方法で腫瘍細胞を認識させ、両者の間に免疫学的なシナプスを誘導する。このシナプスによりT細胞の細胞毒性蛋白が腫瘍細胞に送達され、腫瘍細胞は自己破壊プロセスを引き起こし、アポトーシスに至る。

 フェーズ1臨床試験の対象は、前治療後に再発し治療不能と診断された非ホジキンリンパ腫患者。blinatumomab を0.06mg/m2/日で現在まで投与した7人全員に腫瘍の退縮を認め、奏効例もあった。このような部分奏効または奏効は維持されており、最長で1年以上に及ぶ例もある。本試験で観察された安全性プロファイルもblinatumomabの開発を支える結果であった。

 「非ホジキンリンパ腫では、blinatumomabは従来のモノクローナル抗体に比べて約5段階低い血中濃度で腫瘍の退縮を認めた。T細胞の細胞毒性による高い抗腫瘍活性がblinatumomabにより増強されたことに関連すると考えられる」とMicromet社の上席副社長で最高科学責任者のPatrick Baeuerle氏は説明する。

 また同社の上席副社長で最高医学責任者のCarsten Reinhardt博士は「再発性で治療不能な患者において観察された耐容性のある奏効は、blinatumomabとBiTE抗体が癌と闘う可能性があることを示唆している」と話している。

 さらにMicromet社は、急性リンパ芽球性白血病患者の治療においてblinatumomabを評価するフェーズ2臨床試験、肺癌や消化管の癌の患者の治療において上皮細胞接着分子(EpCAM)を標的とするBiTE抗体MT110を調査するフェーズ1臨床試験も進めている。