米オハイオ州立大学総合癌センター・ヒト癌遺伝子プログラムのLaura Valle氏らは、トランスフォーミング成長因子β受容体1(TGFBR1)遺伝子のアレル間の発現レベルに差があると、大腸癌リスクが上昇することを明らかにした。詳細はScience誌電子版に2008年8月14日に報告された。

 全世界で毎年約100万人が大腸癌を発症する。米国では2008年に14万9000人が新たに大腸癌と診断され、5万人がこの病気で死亡すると予想されている。

 大腸癌の発症には、食事を含む生活習慣と遺伝的な素因がかかわると考えられている。遺伝的な素因は全体の約5%に関係するといわれるが、患者の20%から30%は大腸癌の家族歴を持ことから、見いだされていない遺伝子の関与が予想されていた。

 TGFBR1は、正常なら癌予防に役割を果たす遺伝子だ。ゲノムにはこの遺伝子が2つ(1つは父方、もう1つは母方に由来する)存在し、通常はどちらも同等の発現活性を示す。従って、それぞれの遺伝子に由来する同量のRNAが、TGFβR1たんぱく質の産生に役割を果たしている。

 Valle氏らは、米国で、白人を中心とする大腸癌患者138人の白血球を分析した。それらの患者は、TGFBR1遺伝子の一方ともう一方を区別することを可能にする遺伝子マーカーを保有していた。アレル間の発現量を比較したところ、一方の活性がもう一方の1/3以下だった患者が29人見つかった。先に行われた研究では、活性にこの程度の差があると、転写因子SMADに仲介されるTGFβ信号伝達に異常が発生すると報告されている。

 大腸癌ではない105人についても同様に調べたところ、発現量に1/3以上の差が認められた人は3人に留まった。

 著者らによると、このアレル特異的発現(ASE)は優性遺伝し、家庭内で表現型が分離する。また、既知の家族性大腸癌ではなく、散発性の大腸癌患者に見られるという。

 控えめに推測しても、このASEの存在が大腸癌リスクを8.7倍にする(オッズ比8.7、95%信頼区間2.6-29.1)との結果が得られた。

 詳細に調べたところ、ASEケースでは2通りのTGFBR1ハプロタイプが主に見られた。これらが祖先遺伝子と考えられたが、原因となる生殖細胞系列の変化は同定できなかった。

 信頼区間の幅が広すぎることもあり、今回の発見については、より多くの患者、また異なる人種の患者を対象に確認する必要がある。もしも同様の結果が得られれば、TGFBR1遺伝子のASEを指標とするハイリスク者の同定が可能になるかもしれない。

 研究者たちは今後、発現量に差が現れる原因を分子レベルで明らかにし、異常を修正して大腸癌リスクを下げる方法を探りたい考えだ。