治療歴のない進行肺癌患者に、いずれも他の種類の癌の治療に主に用いられているS-1イリノテカンを併用すると、プラチナ製剤ベースの標準治療と同等以上の効果が期待でき、副作用は小さい可能性が示された。フェーズII試験の詳細は、近畿大学医学部の岡本勇氏らによってClinical Cancer Research誌2008年8月15日号に報告された。

 S-1(商品名「TS-1」)は経口フッ化ピリミジン系抗癌剤で、5-FUのプロドラッグであるテガフール(FT)に、5-FUの分解を阻害し効果を持続させるギメラシル(CDHP)と、5-FUの消化器毒性(吐き気、嘔吐など)を軽減させるオテラシルカリウムを配合したカプセル剤。わが国では1999年の発売以来、胃癌、大腸癌、頭頸部腫瘍、非小細胞肺癌、手術不能または再発乳癌が適応となっている。現在、欧米を含む他の国でも臨床試験が進行中だ。

 イリノテカンは、日本では肺癌治療にも用いられているが、国際的には大腸癌への適用が一般的だ。

 S-1とイリノテカンを併用するフェーズII多施設試験は、日本国内の14施設で、治療歴のない進行肺癌患者56人を対象に行われた。被験者は中央値5サイクルの治療を受けた。エンドポイントは奏効率、無進行生存期間、全生存期間に設定された。

 シングルアームの研究で、被験者全員がS-1/イリノテカンの投与を受けていたため、標準治療と直接の比較はなされていない。しかし、標準治療に比べ副作用はかなり少ないことが示唆された。

 現在、この種の患者に対する標準治療は、プラチナ製剤と他の化学療法剤の併用となっている。プラチナ製剤については、利益がさほど大きくないことから、厳しい有害事象が耐え難いものになりがちだ。有効性は同等でも副作用が小さいなら、S-1ベースのレジメンは患者にとって好ましい選択肢になるだろう。

 有効性については、S-1/イリノテカン併用の奏効率は28%、無進行生存期間の中央値は4.9カ月、全生存期間の中央値は15カ月というデータが今回得られた。

 進行肺癌患者に対する第一選択としてS-1を用いた試験では、奏効率は22%、生存期間の中央値は10.2カ月と報告されており、イリノテカン併用により相乗的な効果が得られる可能性が示された。

 また、これまでに報告されている標準治療の奏効率は17〜33%、進行までの期間の中央値または無進行生存期間は3〜5カ月、全生存期間の中央値は7〜14カ月で、S-1/イリノテカン併用は、標準治療と同等以上の効果を持つと考えられた。

 今後、S-1ベースの治療と標準治療を比較する無作為化試験を行う必要がある。