厚生労働省の先進医療専門家会議は、8月7日、甲状腺髄様癌の原因遺伝子であるRET遺伝子検査先進医療として承認した。遺伝子検査を行うことで、最適な治療法の選択や、遺伝子変異を有することで発症し得る他の疾患の適切な早期診断につながる。

 同会議は、この遺伝子検査の条件として、外科専門医、臨床遺伝専門医、小児科専門医、内分泌専門医の資格を有する医師がいること、病院が遺伝カウンセリングの実施体制を有することを条件として、先進医療を認めるとした。

 甲状腺髄様癌は、甲状腺癌の約2%程度にみられる癌だ。甲状腺髄様癌の約3分の1が、RET遺伝子の変異により発生し、多発性内分泌腫瘍症とも呼ばれる。副腎褐色細胞腫などを発症するリスクも高くなる。

 RET遺伝子に変異を有する場合、ほぼ100%の確率で20歳までに甲状腺髄様癌が発生する。また、変異を有する場合、甲状腺の部分切除では、ほぼ100%の確率で再発する。

 そのため、RET遺伝子の変異の有無を検査することは、甲状腺髄様癌の治療法決定に有用だ。既に、国内の幾つかの医療機関では、甲状腺髄様癌の患者に対しては、まず、RET遺伝子検査を行い、変異が見つかれば全摘、変異が見られなければ部分切除という治療プロトコルを取っている。

 RET遺伝子の変異が両親のどちらかに見つかった場合、その子供が同じRET遺伝子変異を受け継ぐ確率は2分の1だ。髄様癌は、非常に若年で発症することから、欧米のガイドラインは、RET遺伝子陽性の親を持つ子供に対して、非常に早期の段階(生後半年や5歳程度)で遺伝子検査を行い陽性であれば、甲状腺全摘の手術を行うことを推奨している。

 しかし日本では、「甲状腺髄様癌は、血液検査で早期発見が可能で、また早期発見することで、予後が非常によい。その一方で、甲状腺を全摘した場合、甲状腺ホルモンの補充療法を一生涯続ける必要があるというマイナスもある。そのため、定期的な経過観察を続け、微小な髄様癌が発見された段階で治療(全摘)を行っても問題はないのではないかとの考え方が多い」と語るのは、多発性内分泌腫瘍症に詳しい信州大学医学部遺伝医学の櫻井晃洋氏。

 「ただし、何歳までであれば、予後に悪影響を生じることなく経過観察可能かはエビデンスがない状態」と語る。そのため、「我々は多発性内分泌腫瘍症研究コンソーシアム(MEN Consortium of Japan)を立ち上げ、経過観察期間のエビデンスの構築を始めている」という。

 加えて櫻井氏は、「今回の先進医療の承認を通過点として、RET遺伝子検査が将来、保険適応となることを期待している」と語る。