米Memorial Sloan-Kettering癌センターのChristian Nelson氏らは、系統的な文献検索を行い、前立腺癌に対するホルモン療法の副作用として認知機能低下がおこる危険性を示した。概要はCANCER誌電子版に2008年7月28日に報告された。

 ホルモン療法は、前立腺癌に対する有効な治療法として広く適用されている。中でも、精巣でのテストステロン分泌を抑制する黄体化ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト製剤、リュープロレリンやゴセレリンが適用される頻度が高い。ホルモン療法は当初、進行した患者を対象としていたが、近年では早期の患者にも用いられるようになっている。

 この治療の副作用としては、顔のほてり、骨粗鬆症、貧血、疲労、性的欲求喪失、性的機能障害や、糖尿病と心血管疾患リスクの上昇、精神的苦痛などが見られる。さらに最近、認知機能(想起や集中の能力)に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。

 しかし、ホルモン療法の認知機能に対する影響を調べた研究はわずかしかなく、一貫した結果は得られていなかった。

 そこで米Memorial Sloan-Kettering癌センターのChristian Nelson氏らは、動物実験も含む過去の研究報告を対象に系統的文献検索を行い、ホルモン療法と認知機能の関係を明らかにしようと試みた。

 抽出された文献は、男性ホルモン(テストステロン)とその誘導体が、複数の経路を通じて認知機能に影響を与えている可能性を示した。たとえば、テストステロンは脳内の神経伝達物質を調節し、ニューロン間の結合を刺激するという。

 また、前立腺癌に対するホルモン療法の影響を調べた研究は、患者の47〜69%に特定の認知機能の低下が見られることを示していた。最も報告が多かったのは、空間視覚能力に依存する認知機能と、複数の作業を同時に行うといった高次の認知機能の低下だった。

 今回の研究は、ホルモン療法は認知機能にも影響を与えて、意志決定能力や生活の質の低下を引き起こす可能性を示した。従って治療中は、医師も患者も認知機能の変化に気をつける必要があり、徴候を捉えられるよう観察を欠かしてはならないことが示唆された。

 著者らは、ホルモン療法が認知機能に及ぼす影響を、脳のイメージングなどを駆使して評価する、より大規模かつ詳細な研究が必要だ、と述べている。