切除不能な肝細胞癌(HCC)の患者において、死亡絶対リスクがソラフェニブ(商品名「ネクサバール」)投与群ではプラセボ投与群と比較して31%減少し、全生存期間中央値が44%改善した。2007年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で最初に発表されたこの国際フェーズ3臨床試験(SHARP試験)の結果は、New England Journal of Medicine誌2008年7月24日号に掲載された。

 対象は、全身療法の治療歴がない肝癌患者602人。主要評価項目は全生存期間と症状増悪までの期間とし、ソラフェニブとプラセボを投与した患者で比較した。副次評価項目は無増悪期間、病勢コントロール率、安全性とした。

 全生存期間中央値は、ソラフェニブ投与群で10.7カ月、プラセボ投与群で7.9カ月であった(HR=0.69、p=0.0006)。症状増悪までの期間は、質問票に対する患者の回答による評価では両群で差がなかった。

 無増悪期間の中央値は、ソラフェニブ投与群で5.5カ月、プラセボ投与群で2.8カ月であった(HR=0.58、p=<0.001)。ソラフェニブ投与群で最も頻度が高かった薬剤関連性のグレード3または4の有害事象は、下痢と手足症候群であった。ソラフェニブ投与群とプラセボ投与群の間に重篤な有害事象に関する違いは観察されなかった。

 SHARP試験の治験責任医師でHospital Clinic of Barcelona/米国Mount Sinai医大のJosep M. Llovet氏は「他の多くの癌の治療が進歩している中で、生存期間を延長する全身療法がなく、外科治療の機会が限定される肝癌治療は課題であった。画期的な本試験結果により、肝癌の一次治療にソラフェニブを用いる新たな標準全身療法がもたらされる」と話している。また、共同治験責任医師でHospital Clinic of BarcelonaのJordi Bruix氏は「対象患者集団における生存期間の延長が証明され、肝癌の新しい治療選択肢が示されたことに勇気づけられる」と述べている。

 HCCは成人の肝臓の原発悪性腫瘍の90%を占め、世界で6番目に罹患率が高い癌で、癌死の原因の第3位となっている。世界で毎年60万人以上が肝癌と診断され、2002年には約60万人が肝癌で死亡している。

 Bayer Healthcare Pharmaceutical社とOnyx Pharmaceutical社が共同開発したソラフェニブは、癌の増殖に重要な2つのプロセス、すなわち腫瘍細胞増殖と腫瘍血管新生に関与するキナーゼ群に作用する。キナーゼ群にはRafキナーゼ、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-B、KIT、FLT-3、RETが含まれる。

 SHARP試験の結果に基づき、ソラフェニブはHCCを適用として、2007年10月に欧州医薬品審査庁(EMEA)に、同年11月には米食品医薬品局(FDA)に承認された。現在、肝癌に対し40カ国以上、進行腎癌に対し70カ国以上でソラフェニブが承認されている。切除不能なHCC患者に投与する際には、高血圧、出血、心筋虚血・心筋梗塞などにも注意が必要である。