胃癌や大腸癌の手術後に出現する癒着性イレウス(腸閉塞)は、重篤な場合には緊急手術が必要となる。これに対し、加圧した高気圧環境下で100%酸素を吸入する高気圧酸素療法が有効なことが分かった。第63回日本消化器外科学会総会で、2施設から同様の報告がなされた。

 高気圧酸素療法は既に麻痺性イレウスに対し、保険適用となっている。癒着性イレウスが改善するのは、加圧により腸管内にたまったガス容積が減少すること、および血液中に高濃度の酸素が供給されて、低酸素血症状態となっていた腸管の蠕動が回復することなどによるとみられる。高気圧酸素療法の装置は、患者1人が入れる大きさで、約10分で2気圧まで加圧し、それを1時間維持した後、約10分で大気圧まで減圧して治療が行われた。

 順天堂大学伊豆長岡病院外科の櫻田睦氏は、2006年10月から2007年12月までに高気圧酸素療法を行った21人(男性16人、女性5人、平均年齢68.7歳、イレウス既往は平均1.9回)の成績を発表した。イレウス解除は17人(81%)で、解除までの高気圧酸素療法施行回数は平均3.6回だった。ただ、疼痛や腹部膨満が著明な患者8人に対しては、イレウス管挿入後の施行となっており、これらの患者のうち、3人は手術への移行となった。

 櫻田氏は、「全体で81%と高い治癒率が得られたが、イレウス管の挿入が必要な患者は手術以外での治療が難しい強固な腸管の癒着があることが多い。手術を念頭に置く必要がある患者以外では、有用な保存的治療法と考えられる」とした。

 恵庭第一病院外科の秦史壮氏は、2006年12月から2007年12月までに高気圧酸素療法を行った25人(男性21人、女性4人、平均年齢63.1歳)の治療成績を報告した。イレウス解除は21人(84%)で、4人が手術に移行した。このうち2人は、いったん症状が軽快し、経口摂取が可能になるまで回復したものの、再発を来し手術となった。25人のうち、胃管やイレウス管を併用したのは1人のみだった。

 秦氏は、「手術後すぐに発生した癒着性イレウスに使用すると、効果が高い印象がある。治療に伴う副作用症状は特に観察されず、胃管やイレウス管の留置が減少し、患者の苦痛も軽減できると考えられる」とした。

 両氏とも、保存的治療法として、現在この治療法を癒着性イレウスに対する第一選択としているという。ただし、イレウスは、改善後の再発が最も大きな課題だ。これを他の治療法と比べて抑制できるかどうか、今後の症例の蓄積が待たれる。