直腸癌の手術術式の進歩により、肛門に非常に近い位置に癌があっても、肛門機能を温存する肛門括約筋温存術が盛んになっている。しかし、人工肛門(ストーマ)にならないとはいえ、排便障害が他の術式に比べて長期間続くとの指摘もある。そこで、術後2年間にわたり、排便機能を評価したところ、超低位前方切除術を行った患者では2年以上にわたり排便障害が続くことが確かめられた。第63回日本消化器外科学会総会で、杏林大学外科の松岡弘芳氏が報告した。

 松岡氏らが解析したのは、術後2年間にわたり排便機能評価を行うことができた64人。S状結腸切除術が16人、高位前方切除術が12人、上部直腸の低位前方切除術が21人、下部直腸の超低位前方切除が15人だった。術後1、3、6、12、24カ月の時点でそれぞれ排便機能評価を行った。方法は、患者への質問票と直腸肛門内圧検査とした。

 排便回数について、S状結腸切除術および高位前方切除術を行った患者では術後2年までに平均1〜2回へと改善したのに対し、低位前方切除術の場合には、術後1、3、6、12、24カ月の順で5回、5回、4回、4回、4回、超低位前方切除術の場合には8回、6回、5回、4回、4回と、2年経過してもまだ改善とは言い難いレベルであることが分かった。

 しかし、肛門内圧検査の結果はいずれも機能が正常な人と差はなく、いったんは正常な人の半分程度にまで落ち込む直腸の容量も、24カ月後には正常な人に近い数値まで改善していた。また、年齢や性別で分けてみても、特に有意差はみられなかった。

 そこで、超低位前方切除術を行った患者で、術式をさらに詳しく検討したところ、約7cmのJ型結腸嚢(パウチ)を作って吻合術を行った患者と単純な端-端吻合術を行った患者で、排便機能に違いがあった。パウチを作った患者では2年後の排便回数が4〜5回であるのに対し、端-端吻合術の患者では、2年たっても排便回数は7回と多かった。また、直腸の容量についても、改善が遅い傾向がみられた。

 松岡氏は、「パウチの作成が排便機能の改善にある程度は寄与していることが分かった。これまで、排便障害は概ね2年で軽快するとされており、われわれも2年間の経過観察にとどめていたが、超低位前方切除術を行った患者にはより長期間の観察が必要かもしれない」とまとめた。