乳癌患者の約1%が男性だ。しかし、女性患者に比べ男性の乳癌は、進行した段階で診断される割合が高く、治療開始が遅いために予後不良になるケースが多いという。Orion Collaborative GroupのMarina Garassino氏が、2008年7月6日に欧州臨床腫瘍学会(ESMO)Luganoカンファレンスで報告した。

 Garassino氏らは、Orion Collaborative Groupに属する12施設で、1990年から2007年に浸潤性乳癌と診断された146人の男性を対象に、後ろ向き研究を行った。

 患者の多くは、診断時に既に病気が進行した段階にあった。50%の患者にリンパ節転移が認められた。

 全員が腫瘍の外科的切除を受けていた。術後に48人が放射線治療を受け、100人が化学療法またはホルモン治療を受けた。

 追跡期間の中央値5.2年の時点で10年無病生存率を推測したところ、これら患者のうちで最も早い段階で診断されたグループでは80%となったが、腫瘍が最も大きいグループに分類された男性では44%だった。

 腫瘍の分子的特性を調べたところ、73%がエストロゲン受容体と/またはプロゲステロン受容体陽性を示した。41人からなるサブグループを対象にHER-2/neuの状態を分析、48.7%にHER-2/neuの過剰発現を認めた。この遺伝子の過剰発現は癌の悪性度が高いことを意味する。

 男性の乳癌は、早期に治療を開始すればホルモン治療によく反応する。そうした患者の予後は女性より良好かもしれない。この点を確認するためのケースコントロール研究が現在進行中だ。

 男性にも乳癌が起こりうることを知っている人は少ない。今回分析対象となった患者の多くが、乳房の中に発見した腫瘤を癌だとは思わず、その結果早期診断の機会を逸していた。転移が生じて治療が困難になるまで治療を受けていなかった患者も少なくなかった。従って、乳房に腫瘤を発見した場合には、男性であっても即座に癌を疑うことが必要と考えられた。

 男性の乳癌にも女性患者に適用されると同様の治療が施されているが、著者らの研究は、男性と女性の間で、乳癌の組織学的な特徴にいくらか差があることを示唆した。

 男性の乳癌について理解を進めることにより、標的を定めた治療の実現を可能にするデータが蓄積できるはずだ。現在研究者たちは、摘出した組織を対象に治療の選択に役立つ分子的特徴の分析を行っている。