大学生を対象とした調査により、医学部を含む学生の多くが医療用麻薬に関する正しい知識を持っていないが、授業受講後に理解が進むことが明らかになった。これは、弘前大学医学部附属病院緩和ケアチームの佐藤哲観氏らの調査によるもので、7月4日から5日に静岡市で開催された日本緩和医療学会で発表された。

 弘前大学では、医学部医学科4年生に対して、ペインクリニック全般、緩和医療に関する計6コマの授業が行われている。今回の調査は、講義の前後で、緩和医療に対する医学生の認識がいかに変化するかが調査された。調査は無記名式アンケートとして行われ、受講前は88人、受講後は90人から回答を得ている。

 その結果、「癌疼痛に対して確立された標準治療がある」という設問に対して、「そう思う」と回答した割合は受講前は23.9%だったが、受講後に78.9%に改善した。癌の痛みに対しては、既に世界的に標準となった治療治療法が確立している。日本では、この確立した治療法の普及の遅れが問題となっていることが、受講により理解されたといえる。

 また、「医療用麻薬は鎮痛薬として用いても精神的依存を生じる」という設問に対して、「そうは思わない」(精神的依存は生じない)と回答した割合は、受講前35.2%から受講後93.3%となっていた。緩和医療の常識として、痛みを持つ患者に医療用麻薬を投与した場合、精神的依存は一切生じないことが知られている。しかし、この常識も、医学生は講義を受けるまでは持っていなかった訳だ。

 医学部以外の学生に対しても、これらの設問を用いた同様の調査が行われた。その結果の大半は、医学部生とほぼ同じであった。ただし、医学部以外の学生では、受講前のアンケートで「モルヒネなどの医療用麻薬は、命を縮める可能性が高い」と考える生徒が医学部の学生よりも高い傾向があった。また、「モルヒネなどの医療用麻薬は、適切に用いても意識が混濁しやすい」と考える率も、医学部以外の学生で多かった。ただし、これらの設問に対する回答は、講義受講後には、正しい認識に改善されていた。

 医療用麻薬は、痛み緩和によりQOLを改善する効果が認められている一方で、寿命は短縮させないことが世界的な研究で明らかになっている。中には、痛みから解放されることで、QOLが高まり、その影響から寿命が延長される傾向があることを報告する研究もある。また、医療用麻薬は不適切に用いると意識の混濁を招くことがあるが、適切に使用すれば意識の混濁を回避できることも緩和医療の基本知識となっている

 今回の調査をまとめた佐藤氏は、「緩和医療に関する講義の導入は、この数年で全国的に広がり、現在ではほとんどの大学で授業が行われている」と説明する。そのため、これから医師免許を取得する医師の大半は、医療用麻薬に対する正しい基本知識を有することが期待できそうだ。