抗癌剤投与の中止は、積極的な治療法がこれ以上無いことを意味するもので、患者や家族にとって喜ばしくない知らせと受け止められている。一方、治療の中止を伝える医師の多くが、よからぬ知らせを伝える行為を負担に思い、その負担感から「仕事を辞めたい」と思ったことがある医師も約2割に上ることが明らかになった。

 これは、聖隷三方原病院ホスピス科の大谷弘行氏らの調査結果によるもの。7月4〜5日に静岡市で開催された日本緩和医療学会で発表された。同調査は、国内の癌専門病院の腫瘍医に対するアンケート調査として行われた。416人の腫瘍医が回答していた。

 その結果、「抗癌剤治療の中止を患者に伝えることを負担を感じるか」との問いに対して、「感じる」「とても感じる」と回答した医師は190人(47%)と約半数の医師が負担に感じていることが明らかになった。また、「この負担のために、仕事を辞めたいと思うことがありますか」との問いに対して、「ときどき思う」「よく思う」「いつも思う」と回答した医師は72人(18%)となっていた。

 患者にとって良からぬ知らせを伝えることが、医師にとっても大きな負担となっている実態が明らかになったといえる。

 また調査では、具体的に負担に感じる要因も解析さていた。その要因としては、「説明時間の不足」「家族から非難されるのではという心配」「患者の希望を失わせるという感情」があった。日本の多くの腫瘍医は、時間の余裕がない状態で抗癌剤の中止を伝えざるを得ない状況にあり、ネガティブな説明をする立場に加えて、より大きな負担を招いていることを示唆するデータだ。

 負担を軽減するために必要な対策としてアンケート回答者から挙げられた課題は、「周囲の病院や施設(ホスピス等)との連携がスムーズ」「説明のための十分な時間の確保」「説明のための落ち着いた空間の確保」「説明後に患者や家族の気持ちをフォローしてくれる看護師や心理士、メディカルソーシャルワーカー(MSW)の存在」などであった。

 説明を行う上で十分な時間と場所を確保することや、看護師や心理士、MSWも加わったチーム医療は、患者・家族側も同じ需要を持っているはずだ。今回の調査結果から明らかになった問題点は、日本の癌診療が抱える問題点といえる。病院スタッフの「燃え尽き」を防ぎ、緩和ケアとの連携を進める対策が必要だろう。