家族内に乳癌や卵巣癌経験者がいる場合には、乳癌が両方の乳房に生じる可能性や、乳房温存術後の乳房内再発が発生するリスクが高い傾向が示された。これは、癌研究会有明病院の患者データを解析した結果だ。同病院乳腺科の西村誠一郎氏が6月20、21日に開催された家族性腫瘍学会で発表したもの。

 西村氏らは、有明病院内で1999年から2000年に乳房温存術を受けた乳癌患者641人を対象に、前向きに対側乳房への新たな乳癌の発症率、温存した乳房内の再発率と家族性乳癌の関連を調査した。乳房内再発には、取り残した病変による再発に加え、新たな癌が発生した率も含まれる。

 また、同研究における家族性乳癌の定義は、第2度近親者(祖父母、孫、おじ、おば、甥、姪)内に、ー身を含めて3人以上の乳癌または卵巣癌患者がいる場合、⊆身を含めて2人以上の乳癌または卵巣癌患者がおり、かつ40歳未満に発症した患者が存在するか、両側の乳癌を経験した患者がいる場合、となっている。

 その結果、家族性乳癌と考えられる患者は19人(2.9%)存在していた。家族性乳癌の場合、両側性乳癌の発症は19人中9人(47%)と高く、同一乳房内の再発も19人中3人(16%)となっていた。一方、家族歴が無い場合の両側性乳癌の発生は525人中47人(9%)、同一乳房内再発も525人中23人(4%)だった。すなわち、家族性乳癌の場合、両方の乳房に癌が生じるリスクや、温存した乳房内の再発リスクが高い傾向を示した。

 既に米国では、NCCN診療ガイドライン2007年版から、遺伝性乳癌の原因となる遺伝子(BRCA1/2)に変異を持つ患者においては、乳房温存術は控えるべきとする(相対禁忌)記載が加わっている。これは、遺伝性乳癌では、乳房温存後の乳房内再発率が高いことによる。

 今回の調査では、BRCA1/2の変異は調べられていない。ただし、同研究で家族性乳癌と定義された患者には、BRCA1/2変異を有する遺伝性乳癌の患者が多数含まれる可能性がある。

 今後、日本においても、患者の家族歴や遺伝子情報が、米国同様に、治療法選択における重要な情報となる可能性がありそうだ。西村氏によると、「癌研有明病院は、家族歴のある患者に適切に対応するため、『乳癌ハイリスク外来』の開設を検討中」という。