日本人女性を対象とした大規模なケース・コントロール研究により、更年期障害の治療法であるホルモン補充療法は、乳癌の発症リスクを高めないことが明らかになった。埼玉医科大学乳腺腫瘍科教授の佐伯俊昭氏が、6月20日〜21日に都内で開催した家族性腫瘍学会学術集会で発表したもの。

 欧米では、ホルモン補充療法(HRT)が乳癌の発症を高めるリスク因子との研究成果を受けて、HRTの処方を受ける女性が減少している。その減少と共に、米国などでは乳癌の発症率も減少しているという研究もある。その一方で、日本国内におけるHRTと乳癌の関連性を調べる研究はこれまでなかった。

 今回、佐伯氏らは、全国7施設の多施設共同研究として、乳癌患者と、乳癌に罹患していない女性を比較し、乳癌の発症に関連するリスク因子を調査した。対象となったのは、45歳〜69歳の5861人の女性だ。(うち3434人が乳癌患者、2427人が対照群)。

 その結果、全対象者のうちHRT歴がある女性は7.4%であり、乳癌患者ではその数は164人(乳癌患者の5.0%)、対照群では253人(10.7%)となった。すなわち、HRT歴のある女性の方が乳癌の発症リスクが低いという結果となった(オッズ比0.432、95%信頼区間0.352-0.530)。

 今回の結果に対して、佐伯氏は、「日本人では乳癌の発症ピークは閉経前にあり、そのことが今回の結果につながったのではないか」と分析している。また、「今回の結果は、日本更年期学会にも示し、日本人においてHRTは、乳癌の発症リスクを減らしはしないものの増やしもしないというコンセンサスに至っている」と解説した。

 米国では、閉経期女性の2人に1人の割合で更年期障害のためのHRTを受けていた時期もあったと指摘されており、「HRTの乱用とも言える状態」と佐伯氏。今後日本では、HRTを適切に処方し、かつ、患者の乳癌検診を定期的に行うことが徹底されれば、乳癌の死亡率増加を押さえつつ、更年期障害のQOL改善につながる可能性がありそうだ。