英GlaxoSmithKline社は、2008年5月16日、経口型低分子チロシンキナーゼ阻害薬ラパチニブ(商品名「Tykerb」)と抗HER-2受容体抗体製剤トラスツズマブ(商品名「ハーセプチン」)をHER-2陽性の転移性乳癌患者に投与した初めてのフェーズ3試験で、臨床的に意義のある無進行生存期間の延長が見られたと発表した。詳細は、5月30日から行われる米臨床腫瘍学会(ASCO)2008で報告される予定だ。

 この試験を率いたのは米Baylor SammmonsがんセンターのJoyce O’Shaughnessy氏。氏らは、いずれもHER-2分子を標的とするこれら2剤は作用する部位が異なるため、併用すればより完全にHER-2経路を遮断できるのではないかと考えた。

 トラスツズマブはHER-2たんぱく質のうち細胞の外側に出ている部分に結合しその機能を抑制する。一方、ラパチニブはHER-2分子の細胞内領域に備わっているチロシンキナーゼ活性を阻害する。

 オープンラベルのフェーズ3試験は、無作為化多施設試験として296人の患者を対象に行われた。登録されたのは、HER-2陽性の転移性乳がんでトラスツズマブでも病気の進行が止まらなかった女性。全員が前治療歴が多い(中央値は6レジメン)患者で、トラスツズマブについても第1選択、第2選択、第3選択治療としての投与を受けていた。

 患者はラパチニブ単剤、またはラパチニブとトラスツズマブ併用に割り付けられた。ラパチニブ単剤投与群で4週後に病気の進行が見られた患者には、それ以降2剤が併用された。主要エンドポイントは無進行生存期間、2次エンドポイントは、臨床利益率、奏効率、全生存率に設定された。

 トラスツズマブ併用群では、ラパチニブ単剤にくらべ統計学的に有意な無進行生存期間の延長が見られた。中央値はそれぞれ12週と8.1週だった。進行リスクは27%減少した(ハザード比0.73、P=0.008)。

 奏効率(完全奏効+部分奏効)は、併用群10.3%、単剤群6.9%。臨床利益(完全奏効+部分奏効+ 24週以上の病態安定)が認められた患者の割合は24.7%と12.4%(P=0.01)。全生存率も向上傾向を示した(ハザード比0.75、P=0.106)。

 有害事象は両群間でほぼ同様だった。グレード1/2の下痢は併用群で有意に多かった(53%と41%、P=0.03)。併用群で2人、ラパチニブ単剤群で1人に、左室駆出分画の減少が見られた。それらのうち併用群の1人は肺血栓塞栓症で死亡したが、残る2人は回復した。

 以上の結果は、前臨床試験とフェーズ1試験で見られた2剤の共同作用を確認した。また、転移性乳癌患者に対する治療の早い段階でこれらを併用する、または早期乳癌の患者に2剤を併用する治療の可能性を示した。

 現在、より治療歴の少ない患者にラパチニブとトラスツズマブを併用した研究のデータ解析も行われている。

 ラパチニブは米国では2007年3月13日に米食品医薬品局(FDA)の承認を得ている。進行した、または転移性の乳癌で、HER-2の過剰発現があり、アントラサイクリン、タキサン、トラスツズマブの投与歴がある患者にカペシタビンと併用されている。

 欧州でも既に欧州医薬品委員会(CHMP)から好意的な意見を得ており、現在承認を待っている。日本では07年3月に承認申請が提出されている。