癌の組織は癌細胞だけでなく線維芽細胞やリンパ球、マクロファージなど間質を構成する間質細胞からなり、むしろ間質細胞が占める割合が高いことが多い。しかも間質細胞の構造や機能の変化は劇的だ。だからこそ癌の病態を理解し治療法を検討するには、間質細胞を理解するための研究も必須だ――国立がんセンター東病院臨床開発センター臨床腫瘍病理部の石井源一郎氏は、5月15日から開催された第97回日本病理学会総会のシンポジウム「がん生物像を規定する微小環境―がん・間質相互作用の新しい捉え方―」で、間質組織の研究の重要性を訴えた。

 癌組織内の線維芽細胞は、癌間質組織の主要構成細胞で、非癌部の線維芽細胞とは生物学的特性が異なっていると推測されている。

 石井氏は、放射線照射によって骨髄細胞を除去したマウスに、標識した骨髄細胞を移植してさまざまなヒト癌細胞を移植する実験を行った。その結果、マウス内でヒト癌細胞によって形成された癌組織に含まれる線維芽細胞のうち、6割が骨髄由来線維芽細胞であることを確認した。ヒト癌細胞を移植した部位の周辺の線維芽細胞も癌組織には含まれていたが、骨髄から線維芽細胞が大量に動員されたと推測される。また、移植したヒト癌細胞の種類や移植した部位の違いによって動員される骨髄由来線維芽細胞の量が異なっていた。

 また、肺癌患者から摘出された肺の血液を分析したところ、骨髄由来の線維芽細胞の前駆細胞が多く存在することも確認した。加えて、この前駆細胞を担癌マウスの心臓内に注射したところ、腫瘍に注射したヒト線維芽細胞が存在することを明らかにした。

 癌組織には、骨髄由来だけでなく、血管外膜由来の線維芽細胞も存在する。この血管外膜由来の線維芽細胞を、ヒト癌細胞を移植したマウスに投与して解析した結果、腫瘍体積の増加にヒト血管外膜由来細胞が寄与していることも確認した。

 癌組織に動員されたヒト線維芽細胞は、非癌部由来のヒト線維芽細胞と比べ、PDGFに対する走化能が亢進していることも細胞を使った試験で見出した。石井氏は、この結果から、線維芽細胞が癌細胞と接触することで新たな機能を獲得していると考えている。

 最後に石井氏は、癌組織を構成する間質細胞は、静的でなく動的な細胞で、癌を理解する上で間質細胞の動態を理解することは重要であると締めくくった。