米ミシガン大学総合癌センターなどの研究者たちは、特定のマーカーを指標とすれば、化学療法と放射線治療により治癒が望める口腔咽頭癌の患者を見分けられる可能性を示した。この発見について報告した2本の論文は、Journal of Clinical Oncology誌電子版で2008年5月12日に公表された。同誌掲載は7月1日号になる予定。

 これらの研究は口腔咽頭癌のリスク分類を明らかにする試みだ。喫煙率の低下により喫煙が原因の頭頸部腫瘍は減少したが、一方でハイリスクのヒト・パピローマウイルス(HPV)感染に起因する頭頸部腫瘍が増加している。また、治療には強力な化学療法と放射線治療が適用されるが、患者の反応性は個人差が大きい。そこで著者らは、治療によく反応する要因を探るため、バイオマーカーの探索を行った。

 66人の進行した口腔咽頭の扁平上皮癌患者(ステージ3または4)を対象に、標準的な化学療法(シスプラチンまたはカルボプラチンとフルオロウラシルの併用)を1クール行い(導入化学療法)、反応を調べた。

 導入化学療法で腫瘍の大きさが当初の1/2未満まで縮小した54人(81%)の患者は化学放射線併用療法群に割り付け、70Gyの放射線治療とシスプラチンまたはカルボプラチンの投与を並行する治療を3クール継続した。組織学的に感受性のある患者にはパクリタキセルの補助療法が追加された。導入化学療法後に腫瘍が1/2以上の大きさを保っていた患者については、外科的切除を行い、その後放射線を照射した。

 化学放射線併用療法を受けた患者のうち、49人(92%)が組織学的完全奏効を見た。追跡期間の中央値64.1カ月の時点の分析で、4年全生存率は70.4%、疾病特異的生存率は75.8%だった。62%は癌の再発無しに生存していた。このグループでは47人が臓器を完全に保存できた。

 手術を受けたグループでは、生存は11人中4人に留まった。

 治療前に生検が行われた42人について、標本を対象に検査を実施。27人(64.3%)でハイリスク型HPV16が陽性だった。陽性者は、より若い患者、男性、非喫煙者に多かった。HPV16の抗体価は、導入化学療法に対する反応率、化学放射線併用療法の奏効率、全生存率、疾患特異的生存率と有意な相関があった。

 加えて研究者たちは、上皮成長因子受容体(EGFR)、Bcl-xL、p53といった各種マーカーと、治療に対する反応、生存との関係も調べた。

 EGFRの発現は、現在の喫煙、女性、HPV抗体価の減少と相関しており、導入化学療法や化学放射線併用療法に対する反応、全生存率、疾病特異的生存率と負の相関を示した。マーカーの組み合わせでは、HPVの抗体価が低くEGFRが過剰に発現している場合に、全生存率、疾病特異的生存率が最も悪かった。

 生検を行った42人中36人はp53がワイルドタイプで、HPV陽性にもかかわらずp53に変異を起こしていたのは1人だけだった。p53の発現レベルが低くBcl-xLの発現レベルが高い腫瘍も全生存率と疾病特異的生存率が悪かった。

 研究グループは、「症例数が少ないものの、EGFRが低くHPV抗体価の高い患者が最も治療に反応しやすいと考えられる。それ以外のタイプの患者には、禁煙を含めて別の対策と治療法が必要になりそうだ」と結論している。