食道癌で深達度がm3を超える場合、原則として郭清手術が適応となる。しかし、高齢者の場合には手術による身体への負担が大きいことから、まずは内視鏡的粘膜切除術EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術ESD)などの内視鏡治療を試み、その後で追加治療の有無を検討するべきだと、北海道大学消化器内科の清水勇一氏は、第94回日本消化器病学会総会で強調した。

 清水氏らは、2001年4月から2007年4月までに食道癌で内視鏡治療を施行した152人のうち、m3以深の癌で、主に高齢を理由として内視鏡治療を選択した17人を解析対象とした。平均年齢は74.5歳で、男性14人、女性3人。リンパ節転移が陽性だったのは5人だった。

 内視鏡治療の後、3カ月後、6カ月後、1年後、以降毎年1回、局所再発を防ぐために内視鏡検査を行っている。リンパ節転移が陽性だった場合には、内視鏡治療後1年間は3カ月ごと、3年間たつまでは6カ月ごと、以降は6カ月もしくは1年ごとに超音波検査を中心とした経過観察を行っている。清水氏は、「内視鏡治療を選択する段階で、慎重に経過観察を行わないと命にかかわる危険性があると十分説明している。このため、治療後に検査に来ないといった患者は今のところいない」と話した。

 経過観察期間の中央値は43カ月で、この間の転移再発は4人(23.5%)に認められ、1人が死亡した。また、心不全2人、脳梗塞1人と、他病死が3人だった。これにより、全体の5年生存率は67.8%だったが、他病死を除けば、5年生存率は93.8%だった。清水氏は、「こまめな経過観察により転移再発を早期に発見できれば、早期に治療を開始できる。高齢者に対しては、まず内視鏡治療を行い、慎重な経過観察を続けて必要に応じて追加治療を検討する方法が妥当と考えられる」とした。